『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』

いやいやいやいや、笑わせてもらいました。
佐々木蔵之介さんが出ているということしか知らなかった作品ですが(だから「暇だから見てみよう」なんて思えたのですが)、なかなか面白かったです。

以下、超絶ネタバレです。

主演は市原隼人くんでした。愛称は「ママチャリ」(愛車:ママチャリ)。
かわいかった(笑)。彼はドラマ『ルーキーズ』(残念ながら映画は観ていないんです)でも高校生役を演じていましたけど、高校生役がよく似合いますね。女の子といたずらと友情に一生懸命な思春期の男の子(笑)。

舞台は1979年の夏、栃木なのですが、アロハシャツの袖をまくって二の腕を出し、ハーフ丈のジーパンを履いて「うおー」と叫びながら走っていく姿は、なるほど、私のような女(どんな女だよ)を喜ばせるためにしているとしか思えない。
序盤に年上の女性(麻生久美子さん)に恋をするのですが(小学校だか幼稚園の先生を初恋相手だとしなければ、今回が初恋だと河原で宣誓している)、ばっちりスーツできめて彼女が働く喫茶店にかっこつけて赴き、しかし彼女が最大の敵である駐在さんの奥さんだと知ってあっけなく失恋してしまう姿は、なるほど、これまた私のような女(簡単に言えば市原くんより年上といったところだ)を喜ばせるためのエピソードとしか思えない。
佐々木さん演じる駐在さんが彼に、「SM貴族」とかいうエロ本の表紙に書かれた文句を「老眼だから読めない、代わりに読め」と言って奥さんの目の前で読ませるくだりなど、なるほど、私のような女(別に私は変態ではない)をニタニタさせるためのシーンとしか思えない。

……うん、書いていて恥ずかしいぞ!!

本題に移ろう。
あらすじを簡単にご紹介すると、市原くん演じる「ママチャリ」と仲間達6人(「西条」「孝昭」「グレート井上」「千葉くん」「ジェミー」「辻村さん」彼らにもそれぞれ小さなエピソードがあって、それも面白い)が、彼らの町に新しく赴任してきた駐在さんと繰り広げる一夏のバトルを描いた物語です。
しょーもないいたずらばっかりしている「ぼくたち」と、制限時速30kmの田舎道でネズミ獲りを行うケチくさい「駐在さん」の戦争700日分の108日。

前述のように舞台は1979年です。
仲間達の私服が当時流行したラッパズボン(たぶんその頃はまだこの言い方をしていたと思うのですが、どうだろう)だったり、リーゼントだったり、大事なシーンで流行曲がBGMとして使用されていたり(ママチャリが恋する瞬間に『魅せられて』が流れる)、その年の流行歌のジャケットやらCMやらがシーンの切り替え時に登場したり、時代を匂わせる演出がなされています。
でもどこか昭和臭さを感じさせない(感じさせるまで至らなかった?)作品で、見所はそういった時代背景ではありませんでした。まあ、駐在さんといたずら小僧たちの戦い、という点が「昭和」かもしれないけれど。

そんなわけで、一番の見所は「ぼくたち」と「駐在さん」の戦いそのもの、です。
佐々木さん演じる駐在さんがあまりにも大人げなく、誰かが「自分が公務員って事忘れてる」とか言っていましたが、公務員どころか「そんな大人いねーYO!」と思わず叫びたくなるほど、すごかった(笑)。
ていうか、佐々木さんはやっぱり上手い!

「I LOVE(ハートマーク) 栃木」

と書かれた真っ白なTシャツを着て(しかもTシャツはきっちりズボンの中に入れてある)、出てきた時はどうしようかと思いました(笑)。でもそれが違和感ない。前々から感じてはいましたけど、そういうちょっとずれた変な役を自然とやってのける俳優さんなんですね、この方。
『20世紀少年』の感想をネットで読んで回っていたら、劇団時代は悪役ばかりやっていたと書かれたブログ記事を見つけたのですが、彼はどうもこっち系の役のほうが似合うのかもしれないです。
私の中ではドラマ『斉藤さん』で演じていた、良妻賢母ならぬ良夫良父(ちゃんとした熟語があったらどなたか教えてください)みたいな役がお似合いだと思っていたのですが、高校生相手にいたずらを仕掛け、

「はっはっはっー!!」
「ばーか!」

なんて喜んでいるお巡りさん(どんなお巡りだYO!)、とても良かったです。
しかも真顔でやってるから恐い(笑)。
演技に対する真摯な姿勢が、演じているキャラにもそのまま出てしまうから、変わった役をやるとその変な部分が余計に強調されてしまうというか。
佐々木さんは本当に(演技に対して)真面目なお方なんだと、演技を観ていつも感じます。その真面目さが今回は良い方に出ていたような気がする。
無駄に姿勢がいいところとかね、細かいところがツボなんだなよあ、佐々木さんって。

……と、市原くんと佐々木さんの話しか書いていませんが(どんだけ男好きだよ、私は)、ストーリーもツボ満載でした。大笑いするというよりは、細かい笑いの連続といった感じです。
市原くん演じるママチャリの母親役が石野真子さんだったり(2人とも可愛くて本当の親子に見えてしまう!)、その真子さんの曲がBGMに使われたり、ちょい役の常連でもある竹中直人さんがまたまたちょい役で出ていたり(ちょい役でもしばしば目立ちすぎることのある竹中さんですが、今回は程よい出演でした)。
ママチャリ以外の「ぼくたち」を演じる6人の面々もとても良い味を出していました。
青春っていいなあ。本当にいいなあ(泣けてくるぜ)。

肩の力を抜いて、ニヤニヤしながら観る映画です。
疲れた時に観てもいいかな。ちょっと元気が出るかも……?

舞台が夏で、偶然にも今の時期に観られて良かったかなあ、なんて思ったりもしました。
青い空と白い雲、風に揺れる緑の稲穂が眩しかった。ああいう風景がそばにあるのは、素直に羨ましく思います。

ちなみに、原作となったブログではまだ物語は続いているようです(こちら)。
映画の公式サイトはこちらからどうぞ。

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