バンクーバー五輪 フィギュアスケート・ペアFS

申雪/趙宏博組、念願の金メダルおめでとう!!!
パン/トン、銀メダルおめでとう!!
サフチェンコ/ショルコウィー、銅メダルおめでとう!(悔しそうだったけれど……)

前半は割と楽しく各ペアの演技を見ることができましたが、後半はもうダメでした。心臓バクバク、こんなに鼓動が全身に響くほど高鳴ったのは久しぶりでした。

というわけで、まずはSPで目を引いた組からいきたいと思います。

SP15位のジェームス/ボヌール組(フランス)。
カナダのお客さんに大きな声援をもらって、『ロミオとジュリエット』。期待していた二人ですが、ノーミスではなく、ちょっと残念。
演技内容は、上位陣の熾烈な争いに印象が霞んでしまって、もうちょっと思い出せません(苦笑)。
両方黒人というフィギュアでは珍しいペアで、そのことで注目されていることを本人たちもわかっているようです。まずは自分たちの名前を覚えてもらいたい、といったことも言っていたよう。もう十分その目的は果たせましたね。これからの活躍を期待してます!
FSは14位。最終順位も14位でした。

SP12位のヴェラ・バザロワ/ユーリ・ラリオノフ組(ロシア)。
曲は映画『セブン・イヤーズ・イン・チベット』……に摩訶不思議な赤・黄・グレーの衣装。色合いがなんとも微妙な衣装でした。
演技はミスがあり、SPほど感動することができなかったのですが、それにしてもきれいでした。一つ一つの所作が美しく、様になります。
リフトの降り方など随分工夫をしていて、いろいろ試してるなあといった印象を受けました。
FS11位で最終順位は11位でした。次のソチ五輪に向けてどう成長していくか楽しみです。

SP10位、アメリカのアマンダ・エヴォラ/マーク・ラドウィック組。
FSでも、お隣の国ということで大声援を受けていました。
五輪に出られた喜びとそれを楽しむ二人の思いが溢れた演技。多少のミスはあったものの、会心と言ってもいい演技でした。高い点数に二人も大喜び。
今大会はアメリカの二番手としてやってきましたが、一番手のデニー/バレット組の点が伸び悩んだこともあって、アメリカペアとして存在感を残したといった感じ?でしょうか。
ちなみに、女性のエヴォラはそのデニー/バレット組の男性バレットと交際五年目になるんだとか。何やら複雑な関係(笑)。
FSも10位で総合10位。これからに期待です。

SP8位だったロシア二番手、マリア・ムホルトワ/マキシム・トランコフ組。
SPで男性のトランコフがジャンプを失敗し、大きく落ち込んでいました。
曲は映画『ある愛の詩』(に何故か途中で『ニューシネマパラダイス』が入っている)。前回見た試合ではグレーとピンクを基調とした不思議な衣装でしたが、今回は女性が赤、男性が黒のパンツに白シャツと私好み(笑)の衣装に! 素敵でした。
もう聴いただけで泣けてくる音楽にぴったりの世界を描いてくれました(音楽って本当に重要ですね)。演技中どこか幸せそうに笑みを見せる女性の表情も印象的で、最後にまた本当のキス(以前していた)をするかと少しワクワクしていたのですが、どうやら今回は見送ったようでした。カメラは随分寄ってたけど(笑)。
初の五輪、苦い思いもしたかもしれませんが、これからが本当に楽しみなペア。ペア王国奪還に向けて頑張って欲しいです。
FS5位で総合7位でした。

続いて、メダル圏内だったSP上位5組。

SP5位だった中国の張丹(ダン・ジャン)/張昊(ハオ・ジャン)組。
FSの衣装は今季一不思議衣装として随分話題になっていましたが、一月の四大陸選手権から変えたようで、私は初見の衣装でした。
SP5位で最終グループ(上位4組)には惜しくも入れませんでした。
演技のほうは最初のソロジャンプで男性のジャンが転けるというミスはあったものの、おそらく私が見た中では今季一番の出来だったように思います。
いつかの大会で、点数が出た後に二人がバラバラに戻ったことがあったので、五輪は大丈夫だろうかと心配でした。でも今大会はそういったこともなく、完璧とは言えないけど、それなりに満足できる二人の演技を見られて良かったです。
SP4位で最終順位は5位でした。

最終グループ一番滑走はSP3位の川口悠子/アレクサンドル・スミルノフ組(ロシア)。
試合前は四回転のスロージャンプという大技に挑むことを決めていたものの、直前に三回転にすることに決め、気持ちに迷いがあるまま演技に臨んでしまったようでした。
その最初のスロージャンプの着氷で躓き、立て直すことができぬままミスを繰り返してしまい、FSは7位。最終順位は4位と、メダルに届きませんでした。
……うーん、とても残念。
ペアの練習・教育環境が整わない日本を飛び出し、海外で相手を見つけ、国籍を変えて五輪に挑む選手はこれまでもいました。川口さんも苦労を重ねての出場でした(私より一歳上なだけなんですよね……)。
今大会はペア王国ロシアの一番手として挑んだわけですが、「私の国籍はスケート」という彼女の言葉通り、スケート(全スポーツに当てはまりますが)には国境などないのだと改めて考えさせられました。
他の競技でも国籍を変えて出場する選手はたくさんいます(練習拠点が外国という選手もざら)。五輪というとなにかと国籍や国別のメダルが話題にされますが、スポーツには国境などないということを教えてくれるのも五輪なんですよね。
いい演技には惜しみなく拍手を送り、自身の最高を目指して懸命に頑張るすべての選手を讃える。それが五輪の、そしてスポーツの醍醐味なんですよね。
そして、日本では影の薄いペアという種目に(一時的かもしれませんが)多くの人の目を向けさせてくれました。ペアファンとして、そのことも嬉しかったです。
スミルノフ選手とはペアを結成してまだ四年ほどで、これからのペアなんですよね。まだまだ続けて欲しいです。

二番滑走はSP2位のドイツ、アリオナ・サフチェンコ/ロビン・ショルコウィー組。
こちらもどうしたことか、ミスが重なって本人たちにとって残念な結果となりました。
映画『愛と哀しみの果て』の音楽にのって、男女の出会いと別れをしっとりと美しく滑ったのですが、ミスの許されない状況の中でジャンプでミスをしてしまいました。演技後、女性サフチェンコのどこか遠くを見つめる瞳は、濡れているようにも見えました。その横顔が今でも強く印象に残っています。
銅メダルは獲得したものの、二人が目指していたのは金メダルで、表彰式でも寂しい表情をしていたようです。
本当に本当に、ペアの美しさを見せてくれる素敵なペアで、最後笑顔が見られなかったのが残念でした。
FS3位、最終順位3位でした。

ミスが続いてリンクに重苦しい空気が漂う中、登場したのは中国のホウ清(チン・パン)/トウ健(ジエン・トン)組。
SP4位のこの二人は、前回トリノ五輪ではわずかにメダルに届かず4位でした。とにかく五輪のメダルを、と頑張ってきた二人が今季のFSに選んだ曲は、久石譲さんの『ラ・マンチャの男』より『見果てぬ夢』。今季ペアのナンバー1プログラムとファンの間で評判の高いプログラムです。
最初の要素はソロのコンビネーションジャンプ。ダブルアクセル~ダブルアクセルのジャンプシークエンスは、タイミングもぴったり合わせて軽やかに成功!(この時、実況の西岡アナの声にとても力が入っていて、見ている側の気持ちを代弁してくれているようでした)
しかし、前の二ペアはジャンプでのミスが続いていたので、まだ安心はできず、固唾を呑んでテレビ画面を凝視。
次の要素はソロジャンプ(トリプルサルコウ)。この直後に二人が手のひらを合わせる振り付けがあるのですが、ジャンプを成功させた後二人が力強く手を合わせたのを見て、「いける!」と思いました。
この後はもう言わずもがな。ペアのことなど何も知らない私の母も「きれいだ!」と連呼するほど、素晴らしい演技を見せてくれました。
後半はスロージャンプとリフトが続くのですが、最後のリフトでは女性を持ち上げた男性のトンがイーグルをしながら空いた片手を広げると、それに合わせて空中の女性パンも手を広げ、場内は大きな歓声に包まれました。そして歓声が鳴りやまぬままフィニッシュ!!
この日一番の大歓声。もう涙なしではいられませんでした。
盛り上げ方も最高にかっこいいプログラムを、五輪という大舞台で完成させてくれました。
得点は最高点を記録。もちろん暫定順位1位、この時点でメダル確定となります。

会場の興奮が冷めやらぬまま最終滑走を迎えるのは、同じ中国の申雪(シュー・シェン)/趙宏博(ツァオ・ホンボー)組。私が一番好きなペアです。
この空気に飲まれないかと不安が過ぎる私を余所に、二人は笑顔でリンクの中央へ。
曲は『アルビノーニのアダージョ』。これまた私の大好きな曲で、金メダルをとるためだけに戻ってきた二人の演技が始まりました。
相変わらずの情熱的な二人でしたが、なんと二番目のリフトでミス。空中でスケート靴のブレードを掴もうとした女性の申雪が、ブレードを掴みきれずに体勢を崩し、落下(というかそのまま降りてしまったというか)。男性の背中を伝うように降りたものの、一つ間違えば……という状況だったので、もう私は気が気ではない状態に。
この後続くリフトやスロージャンプやらは、どうか失敗しないようにとただそれだけを願って見ていました。
しかし二人は不安な表情を見せることなく笑顔で滑り、大きなミスはこれだけで演技終了。演技後は、一瞬「やってしまった」という表情を見せた趙宏博に申雪が笑顔で声を掛け、趙も小さくガッツポーズしていました。
そしてFSの結果は……前のパン/トン組より約2点少ない2位。しかしパン/トン組とはSPで5点差近くつけていたので総合で1位となり、念願の金メダルに輝きました。
「First place(第一位)」との場内アナウンスが流れた瞬間、趙宏博は雄叫びをあげ、申雪は両手で顔を覆って号泣。
完璧な演技ではなかったために、結果が出ても動揺していた私も、二人のこの姿に涙が溢れてきました。

二人が初めて出場した五輪は長野。私はあまり覚えていないのですが、豪快なリフトやスロージャンプで人々を驚かせ、その時は初出場ながら5位となりました。
ウィキペディアによると伊藤みどりさんが「(ダイナミックさを持ち込んだという点で)ペアの歴史を変えた」と評したという二人はしかし、そのアクロバティックな面ばかりが評価され、芸術面は弱点だとされていました(そんな二人も今では芸術面が売りとされるほどに……)。
ソルトレーク五輪とトリノ五輪と銅メダルに終わり、昨シーズンは競技会にも参加していなかったので、(情報に疎い私は)二人はもう引退してしまったのだと思っていました。それが今季になって復活。本当に嬉しかったです。
五輪で金メダルをとるためだけに戻ってきた二人は、久しぶりの競技会で圧巻の演技を見せ続けました。でも私には「やっぱり五輪だから」と、最後の最後まで金メダルがとれないかもしれないという不安は残っていました。
しかし二人は最後まで笑顔で滑り、見事金メダルを手にしました。

初出場の長野から十二年経て辿り着いた金メダル。
まだダイナミックさが売りだった頃の二人がNHK杯に出場した際のことです。二人がエキシビジョンでアンコール拍手に応え、安室ちゃん(たしか)の曲に合わせてスロージャンプやリフトを見せてくれたことを今も覚えています。いつのNHK杯だったかは忘れましたが、おそらくあれから十年近くは経っていると思います。
私のフィギュア観戦が始まってからずっといた二人です。今回で本当に去ってしまうんだと思うと寂しいですが、二人にとって最高の結果で終わることができたのは、私にとっても幸せな出来事です。
本当に嬉しいです。おめでとう。そしてありがとう、本当にありがとう!!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA