ふたりで微睡(まどろ)む

夏だったかな、ほどよく汗ばむ日でした。
友人が私の部屋にやってきました。何か特別な理由があったわけではなくて、「ただ来てみた」、そんな感じでした。
そんなんだからすることがなくて時間を持て余してしまい、気が付いたら、窓から差し込む日差しでポカポカ温まった畳の上でゴロリ、二人とも眠っていました。

目が覚めたのは確か午後の三時とか四時とか、そのくらいでした。
体は汗ばんでました。首や額なんかが濡れてました。でも気持ち悪いということはなくて、なんだか清々しかったのを覚えています。

私の中で、一番心に残っているお昼寝です。

いつだったかなあ、学生の時ですけど、何回生だったかは覚えていません。まだ十年は経っていませんけど、来年か再来年くらいにはあれから十年になるかもしれないです。

あの何でもない時間が、時々恋しくなります。
あの時の、日差しを浴びて輝いていた畳や空気、汗を拭って濡れた手の甲などが思い出されて。
私の六畳一間は家具が少なくてだだっ広いのが自慢でした。
ただそれだけの殺風景な部屋で、友人と二人、するつもりなどなかったお昼寝をしていた。

何かを生み出したわけではなく、何かを失ったわけでもない「何でもない時間」。何でもないんだけど、その「無」な感じが、なんて言うんだろう、愛おしく感じるんです。
思えば、無言の心地よさを知ったのは学生の時でした。何度か経験した「無言の心地よさ」の中に、このお昼寝も入ります。
最近はないです、そういう心地。

一人じゃなくて、二人でね。二人で味う心地よい微睡み、無言のひととき。
それが欲しいなあって思う時が、ふと、あります。

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