『手紙』

映画『手紙』のDVDを見ました。
出演は山田孝之、玉山鉄二、沢尻エリカ等。
加害者家族の視点で、人生の再生を描いたヒューマンドラマです。
テンポ良く、サクサクと進みます。時間も気にならず、後味も良い。
休日に気分転換に見るのに良いかもしれません。
映画というより単発ドラマといった感じもしましたが、良作です。

というわけで、以下超絶ネタバレ。

主人公の武島直貴(山田孝之)は、川崎のリサイクル工場で働いている。
いつも帽子を深く被り、工場の同僚とも距離を置くようにしている直貴。彼が人目を避けるようにして生きているのには、理由があった。兄が犯罪者なのだ。
たった一人の家族である兄・剛志(玉山鉄二)は、直貴を大学に行かせるためにと強盗に入った家で、人を殺めてしまい、刑に服していた。
兄と手紙のやりとりを続け、お互いに励まし合い生きていく二人。
しかし、直貴は「兄が犯罪者」ということで周囲から差別を受け、当然のように進学は諦め、引っ越しや転職を繰り返すという暮らしを、高校生の時から送っている。
漫才師でてっぺんを目指すという夢も、大好きだった女性との結婚も、「兄が犯罪者」という理由で諦めざるを得なかった直貴は、いつしか兄を疎むようになり、兄へ手紙を書かなくなっていた。

※  ※  ※

原作は東野圭吾さんの同名小説。読んだことはありません(でも映画を見て読みたくなった)。
話題になっていた作品であるというのは知っていたのですが、テーマが重そうで手が伸ばせずにいました。
今回は、母が同僚に勧められてDVDを借りてきたのを一緒に見ました。
PCを触りながらのながら見だったので、細部まではきっちりと見ておらず、感想を書くのもあれなんですが……。思ったことを書いてみたいと思います。
うまくまとめきれないかも。。

主人公・武島直貴を演じるのは山田孝之くん。
ドラマ『白夜行』以来、私の中ではすっかり暗い役柄のイメージがついてしまった山田くんですが、今回も不幸オーラが半端なかったです。
重いものを背負って生きているというのが、立っているだけでわかります。
あのすべてを見透かしたような冷めた目と佇まいで、どんな人生を生きてきたかが容易に想像できる。実際に、直貴は苦難の人生を送っていました。
かといって、人生を本当に諦めたというわけではない。
まだ20歳という若い彼は、友人と漫才師を目指し、その夢に向かって突き進みます。大企業の専務令嬢との恋に、夢中になります。
自暴自棄になる反面、どこかで人生を諦めきれないでいる。苦しみながら、自分の人生を呪いながらも、それでも生きていこうとする姿が印象的でした。

直貴は、根は真面目なんですね。高校は有名な進学校で勉強もできる。仕事も真面目にこなすので、「兄が犯罪者」という偏見がなければ、皆普通に接してくれるんです。
そんな彼だからこそ、味方もできます。
中学時代から一緒に漫才師を目指す寺尾祐輔(尾上寛之)はもちろんのこと、リサイクル工場で出会った由美子(沢尻エリカ)や、(物語の中で)最後に就職するケーズデンキの会長などなど。
「漫才の夢を諦めるな」と背中を押してくれたのは、工場の同僚・倉田(田中要次)でした。
世間の冷たい風を正面から受けながらも、倒れることなく、直貴は生きていきます。

そんな中、直貴は兄に対して憎しみを覚えていきます。
直貴が兄の犯罪のせいで夢や恋を諦める中、剛志は手紙に他愛もない日常を、(直貴から見て)呑気なことばかりを書いてくるのです。
何もしていないのに「兄が犯罪者」というだけで、社会で差別されながら生きている自分。それに比べ、刑務所の中で暮らす剛志は差別されることもなく、平穏に生きているのではないか。
直貴はいつしか剛志への手紙を書かなくなっていました。

しかし、直貴は気付いていないんですね。
直貴には支えになる人が何人もいる。でも剛志には支えとなる人は直貴しかいない。
実は直貴が手紙を書かない間、由美子が直貴に内緒で、剛志と手紙のやりとりをしていました。
剛志はそれまで手書きだった手紙がPCで書かれるようになっても(筆跡が違うため由美子はPCで書いていた)、書き手が変わったことに気付かず、直貴からの手紙だと信じて、由美子とのやりとりを続けていくんです。
直貴は最後のシーンで「バカな兄貴」と剛志のことを評するのですが、その通り、バカ正直というか純粋な剛志の手紙は、とても切ないものがあります。優しく語りかけているけど、とても孤独なんです。
手紙を読む剛志役の玉山鉄二さんの声もまた、いいんですね。剛志の純粋さが伝わってきます。社会の泥にまみれて生きる直貴(山田くん)の汚れた雰囲気とは対照的で。

様々な苦難を乗り越えて、剛志は幸せを掴みます。由美子と結婚をし、可愛い娘ができるのです。仕事も順調で、幸せな日々を送っていました。
でもやはり、「兄が犯罪者」という事実は彼を追いかけてきます。
彼らが住む社宅で妙な噂が広がり、娘が「ひとごろし」の娘と言われ、仲間はずれをされるようになるんです。
これをきっかけに、直貴は兄と決別することを決意しますが……。

※  ※  ※

物語の中で一番のポイントとなるのが、会長が直貴に言った言葉です。
加害者の罪というのは、被害者に対してだけでなく、加害者の家族が受ける苦しみも含めて、罪と言うんだと。
そして、差別はあって当たり前だとも会長は言いました。
誰しも犯罪から遠いところにいたいし、犯罪者の家族がいれば、彼らを遠ざけるのもまた当然だと。
「差別のない場所に行きたい」と言う直貴に、「ここで生きるんだよ」と告げます。

会長のこの言葉が、この物語を集約しているように思いました。

※  ※  ※

見る前は、こういうテーマは上から目線になるんじゃないか(加害者家族を差別する心なき一般人を批判する、とか)と思っていましたが、直貴の視点で彼の人生が淡々と描かれていました。
兄の苦しみや周囲の人間の感情、被害者の思いといったものを必要以上に描くこともなく、あくまでも直貴、彼の視点なんですね。
彼が知らないことは見ている側もわからない、というか。
ミステリーで徐々に謎が解明されていくように、直貴の心が少しずつ解きほぐされていきます。
じんわりと、こちらの心も感動で満たされていきました。

主演の山田くんや玉山くんの演技も素晴らしかったですが、脇の俳優さんも良かったです。
特にお気に入りは、直貴と漫才コンビ「テラタケ」を組む友人・寺尾を演じた尾上寛之さん。根暗で真面目な直貴とは正反対で、ひょうきんな感じがお笑い好きな男の子、って感じでした。
最後の漫才のシーン。兄のことを涙ぐみながら語る直貴の横で、直貴を必死にフォローしようとする姿は良かったです。

そういえば、漫才のネタが意外と面白かったです。こういうのに出てくる漫才のネタってつまらないと思っていたけど。
高度なしゃべり漫才というよりは、いかにも若手の漫才って感じですが、必見です。
二人の掛け合いも違和感なかったですし。

残念だったのは、最初はあか抜けなかった由美子が突然派手になっていたこと。沢尻さんは清純な格好のほうが好きなので(笑)。
沢尻さんの関西訛り、頑張っていたのですがあまりお上手ではありませんでした。
由美子が関西出身である必要性はなかったので、普通に標準語で良かったかも。

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