『お父ちゃんの初七日』『海角七号/君想う、国境の南』~アジアフォーカス・福岡国際映画祭2010

アジアフォーカス・福岡国際映画祭、初日に韓国、フィリピンの社会派作品を見て、若干(うそ、だいぶ)疲れました。生まれて初めての映画祭の初めての日ということもあって。
そういうわけで、二日目は笑って泣いて楽しめそうな台湾映画を選びました。
『お父ちゃんの初七日』と、協賛企画で開催された「台湾映画祭2010」の『海角七号/君想う、国境の南』です。

『お父ちゃん~』のほうは今映画祭が初の日本上映となりますが、『海角七号』は二年前の作品で、すでに日本でも公開済み。台湾で大ヒットした作品ということで、気になったので見に行ってきました。

それでは、感想。

まずは『お父ちゃんの初七日』から。
台湾の中南部で行われている伝統的な葬式を舞台に、主人公の女性と亡き父との思い出を描いた作品です。

とにかく「なんじゃこりゃ」と思わずにはいられない葬儀のしきたりに、何度も笑ってしまいました。いやはや、大変です、ほんとに(笑)。
七日間かけて行われる葬儀を笑いたっぷりに描きながら、その合間合間に、主人公メイが亡き父との思い出を回想する、という物語展開になっています。

もはや忙しすぎて父を失った悲しみに浸る余裕さえないほどなのですが、その中でもちょっとしたことで亡き父の温かさ、優しさを、主人公は思い出していきます。
その回想シーンが、私は一番好きでした。主人公の父親の優しさに見ている側も包まれていくような感覚で、いろいろ自分の経験なども思い出されて、特に最後のシーンでは涙が止まりませんでした。
また、父親役の俳優さんがとても素敵な方なんです。外見がハンサム、というわけではないのですけど、とてもいい味出してるんですよ。

俳優さん(というか登場人物)も、この作品の大きな魅力です。
主人公のメイを演じたワン・リーウェンさんもさることながら(都会に出ても全然垢抜けてないところがいい)、導師役のウー・ポンフェンさん(ティーチインで拝見しました!とてもオシャレでかっこよかった!)は、いい加減のようでいて主人公姉弟を温かく見守る叔父(か伯父かどっちだったか、どちらでもなかったか)さんを演じていました。
甥?を演じた若手俳優さんはイケメンくんで、すっかり惚れてしまいました(笑)。

物語自体はとてもベタです。だからこそ安心して見られる、というのもあったかな。
台湾の昔ながらの風習を描きながら、冒頭ではユダヤ、エンディングではスペイン(確か)の音楽を使用したり(あと日本の梶芽衣子さんの『怨み節』が某回想シーンで使用されてます)と、国際的?でもあります。
そして、日本人にとって嬉しくもあり、また複雑にもなるのが、日本の植民地時代の名残でもある日本語の使用です。

ティーチインでは、この作品の原作者でもあり、監督でもあるエッセイ・リウさんと、導師役のウー・ポンフォンさんが台湾での日本の印象について好意的に話してくださいました。そのことに嬉しく感じながらも、反面、台湾でそうやって日本の文化が一部とはいえ残っていることを、日本にいる私たちはどれだけ知っているだろうと考えさせられました。
同じ東アジアでも中国や韓国には注目しているのに、二カ国に比べると日本に対して好意的でもある台湾の存在が(自分の中で)小さいことに、なんというかショックでした。

それは続けて見た、協賛企画『台湾映画祭』で上映された『海角七号/君想う、国境の南』でも感じました。

この作品は、戦時中、日本から台湾に赴任してきた日本人教師の青年が台湾の教え子と恋に落ち、戦争が終わって帰国する船の中で書き留めた彼女への恋文が軸となった物語です。
映画自体は商業映画で、展開もうまく伝わらない部分が結構あって、決して良質とは言えない作品だと思うのですが、そんな映画が、しかも日本人の女性をヒロインに置き、日本語のナレーションから始まるという物語が台湾で大ヒットしているんですね。それが不思議でなりませんでした。

映画の内容を簡単にご紹介すると、軸は上記に書いたように日本人教師の恋文なんですが、舞台は現代です。
台湾の小さな町にやってきた日本人の女の子が、地元で行われる中孝介(本人出演ですが、演技は目がテンになるほどの棒っぷりです、笑)のコンサートで前座を行う地元のバンドと対立しながら、次第に心を通わせていくというストーリー。もちろん、バンドメンバーと恋に落ちる設定も入っています(笑)。
その恋のお相手が中くん並みの濃い顔で、2人が並ぶと兄弟のように見えるくらいなのですが、まあ、それは余談です。

一番面白かったのは、バンドのメンバーである月琴奏者のおじいちゃんでしょうか。お笑い担当、といった感じです。
彼がいなければ楽しめたかどうかわからないくらい、とてもいい味を出しています。
他のメンバーもかなり特徴的に描かれています。偶然見つけた主演のファン・イーチェンさんのインタビューを読んでみると、台湾人でも職業や種族など違うタイプの人間模様を描いているようです。
「日本と台湾」という構造だけではないんですね。このあたりは台湾をよく知らない人にはわかりにくいかも(私もインタビューを読んで初めて知りました)。

日本の扱いに関してですが、この映画では日本が「異質な物珍しいもの」として扱われておらず、まずはそのことに驚きました。
主人公の日本人女性は北京語を話しますし、見た目も台湾の方と日本人は似たようなところがあるので、ビジュアル的にも違和感を覚えることはなく。

日本人がいても変な目で見られることはなくて、「あなた日本人ね。さあ、家に上がって」なんて言われるんです。さすがにその場面には戸惑いました。あくまでもフィクションなので、実際に現代の台湾で日本や日本人がどのように受け入れられているのかはわかりませんけど、「100%ありえない」シーンではない、ということなのかなあと思ったり思わなかったり……。

とにかく不思議な感覚でした。
欧米や中韓の作品などで描かれるような日本人ではない日本人がそこにいて、こんな風に私たちを見てくれる異国もあるのかと。
これをどう受け止めればいいのか、私にはちょっとわかりません。。

肩の力を抜いて楽しめる映画になっているので(むしろ力を抜かないとダメ、笑)、レンタルででもご覧になってみてください。
あと、クライマックスでバンドが演奏する曲が結構良かったです。ここも必見!

あ、上にリンクを貼ったファンさんのインタビューはとても興味深いお話なので(台湾人の日本人に対する印象とか)、こちらもおすすめです。

……というわけで、日本と台湾の関係について(ちょっと)考えた、映画祭二日目でした。

『お父ちゃんの初七日』(原題:Seven Days in Hevean/Fu Hou Qi Ri 父語七日 )
2009年/台湾/92分
監 督:ワン・ユィリン、エッセイ・リウ
出演者:ワン・リーウェン、ウー・ポンフォン、チェン・チアシャン

『海角七号/君想う、国境の南』(原題:海角七号)
2008年/台湾/130分
監 督:ウェイ・ダーション
出演者:ファン・イーチェン、田中千絵、中孝介

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