『夢追いかけて』~アジアフォーカス・福岡国際映画祭2010

「アジアフォーカス・福岡国際映画祭」が終わって一週間が経ちます。
気が抜けたのか、感想文も書くペースが落ちてしまいました。。感動の記憶も薄れてきているので早めに仕上げねば!!

今日ご紹介する作品は、今映画祭で見た作品の中でもお気に入りのひとつ、インドネシア映画『夢追いかけて』。
昨年の映画祭で上映され、評判となったリリ・リザ監督の『虹の兵士たち』の続編だそうで、今年のオープニング上映にも選ばれた作品です。私は前作は見ていないものの気になっていた作品でした。

映画祭が始まってからも、ツイッターなどで感想を探すとやはり評判は良いよう。見逃してはならないと思い、最後の上映日に足を運びました。

では、少しネタバレで。

物語は、大学卒業後まともな職に就けず、嫌々ながら郵便局で働いている主人公イカルが過去を回想する場面から始まります。

父親を失い一人となってしまったいとこのアライと暮らすことになったイカル。
自分にはない雰囲気を持ったアライを、彼はすぐに好きになり、家族として、一番の親友として慕うようになります。
その後、二人は吃音症で馬好きのジンブロンと仲良くなり、常に三人で行動するように。
物語は三人の出会いと夢、そして別れをまぶしく描いていきます。

夢を語り、夢がなければ生きていけないと言うアライ。
アライに振り回され、時に衝突しながらも、彼と一緒に生きていくことを決めるイカル。
馬が好きすぎて馬になることさえ夢見てしまう、大人しくて心優しいジンブロン。

親元を離れて公立高校に通うことになった三人は、夢を叶えるために働きながら、勉学にも懸命に励みます。
彼らの暮らす島は貧しく、イカルの父親が失業にあったり、ジンブロンは小さいときに家族を事故で失い、孤児として牧師に育てられていたりと、誰一人として裕福な暮らしをしてはいません。働くことも貧しいがゆえなのですが、そこに悲惨さはなく、三人とも生き生きと輝いています。
そして、青春に欠かせない恋やエロネタ(笑)も、きっちり盛り込まれていて、それらにも彼らは一生懸命。

三人を演じた少年たちの演技も、三人とも新人だそうですが、とても良かったです(アライはイケメンだったし!)。
上記のようにイカルの回想として物語は始まるので、現在の(たぶん)25歳くらいになったイカルたちも出てくるのですが、彼らよりも少年たちのほうがずっと魅力的でした。

素晴らしかったのは三人だけでなく、彼らを取り囲む大人たちも。
この作品には悪い人はいないのですが、その中でも特に若手熱血教師の存在は、彼らの人生に大きな影響を与えています(この先生役の俳優さんがまた若々しくステキなのだ!)
彼が生徒たちに好きな言葉を発表させる場面は、特に良かったです。「言葉」の力を強く感じさせる場面でした。

その熱血教師とは反対に、怖いことで嫌われているのが校長先生。
もちろん悪い人ではないのですが、はじめは熱血教師との間の確執も匂わせる場面があったり、やたらと厳しかったり、イカルたちの「敵」のように描かれています。
が、そこはまあ「厳しくするのも子供たちのため」という心情が隠されていることは言わずもがななんですが。

教師が主人公たちに大きく影響を与えたように、彼らもまた子供たちから何かを得ていきます。
物語が進むにつれ、熱血教師と校長先生の関係にも変化が訪れていく様子も見所の一つです。

そして、イカルと無口な父親との関係。
互いに思いやる心が、切なく、美しく描かれています。
インドネシアでは目上の人に感謝の意を表したりするとき(?)、相手の手をとり、手の甲に自分の額をつけるようで、その場面がとても胸に沁みました。

ストーリー自体はベタながら、伏線の回収の仕方は見事で思わず唸らされました。
特に主人公が郵便局を嫌う理由、ジンブロンが夢を叶えるために買った二つの貯金箱のエピソード。そしてラストに舞う雪。
こっそりと散りばめられた小さな宝箱が、ラストに向かって次々と開いていく様は見事でした。

もうひとつ目を引いたのが、少年たちの疾走シーン。
学校の集会でいたずらをして、怒った教師たちから逃げ回る場面や、父を追いかけて草原の中をイカルが駆け抜けていく場面など。
それはあっという間に過ぎていく彼らの青春(時間だったり、若さだったり)の象徴のようでした。
私の大好きなシーンです。

気になった点は、音楽が少し過剰に感じられたこと。それはこの映画祭で音楽のない映画を見続けていたせいもあるかもしれませんが、「このシーンでこの音楽要らないのに」と感じた箇所がいくつかありました。
音楽がなくても十分に魅せられるんじゃないかと、個人的に感じました。

あと、これは作品とは関係ないのですが、私が見た回は途中入場者が軽く10人を超え、上映中に席を立ってうろうろする子供までいました。字幕やスクリーンが見えないシーンもあったので、とても残念でした。いい作品だっただけに。
映画は選べても観客は選べないんですよねえ。。

『夢追いかけて』(原題:The Dreamer/Sang Pemimpi)
2009年/インドネシア/122分
監 督:リリ・リザ
出演者:レンディ・アフマド、アズウィル・フィトゥリアント、フィクリ・セプティアワン

この作品は前述のように『虹の兵士たち』という映画の続編(三部作の二作目らしい)となっていますが、物語自体に繋がりはないようで、単独で楽しめます。
しかし、続編を匂わせるようなラストになっていて、最後の作品はどんなものになるのか、来年の映画祭で公開されるのか、とても気になります。

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