『十三人の刺客』

噂の悪役殿様・稲垣吾郎が気になっていたので、見に行ってきました。

以下、超ネタバレ。

※  ※  ※

ストーリーはシネマ・トゥデイより。

幕府の権力をわが物にするため、罪なき民衆に不条理な殺りくを繰り返す暴君・松平斉韶(稲垣吾郎)を暗殺するため、島田新左衛門(役所広司)の下に13人の刺客が集結する。斉韶のもとには新左衛門のかつての同門・鬼頭半兵衛(市村正親)ら総勢300人超の武士が鉄壁の布陣を敷いていたが、新左衛門には秘策があった。

鑑賞後の率直な感想としては、「とにかく疲れた」(笑)。後半はずっと戦のシーンで、血や死体が飛びまくって、疲れます。この手の映画(時代劇・グロテスク系)には慣れてないので、精神的にも体力的にもしんどかったです。
娯楽として楽しむにはちょっと……という感じです。
見た後に思わず拍手したくなったのですが、それは最後まで見ることのできた自分に、です(笑)。
突っ込みどころは満載ですが、あまり気にならないです。

一番楽しみにしていたのは、極悪非道な殿様を演じた稲垣吾郎。
(私が知る範囲では)評判が良かったので期待して見に行ったのですが、見事に期待通りでした。

しかし、彼が演じた殿様は想像以上の非道ぶりでした。目を背けたくなる場面が何度も。。
遊び感覚で人を殺すシーンなども十分酷いのですが、一番強烈だったのが夕食のシーンです。
突然箸を捨て、汁物やおかずをこぼし始めたので、「まずい、なんだこの飯は!」と怒りだすのかと思ったら、おかずを全部ごちゃ混ぜにして、顔から突っ込んでむしゃぶりつくんです。思わず「うっ」と声が出てしまいそうでした。
いやはや、アイドル(とされているSMAPの)吾郎ちゃんがよくぞここまで、と思わずにいられませんでした。先入観はいけませんけどね。
特に凄いなあと思ったのは、この役を彼がやっていることに違和感がなかったことです。どんなに演技が上手でも、雰囲気が合わなければ意味がないんですが、彼はこの役がぴったりはまっているんです。演技云々の前に。そこが凄いなあと。見事な配役でした。
ただ、一番肝心な最後のシーンがイマイチだったのが残念。あれは演技以前に演出・脚本の問題もあるかと思うけど。
最後まで頭のおかしい狂った殿様を通してほしかったです。

見所でもある後半の殺陣シーン。300人の侍たちが互いに切りまくって、皆人格がおかしくなっていく。その壮絶さ、狂気がとてもよく伝わってきました。
若手俳優たちから松方さんらベテランまで、狂って死んでいく様が本当に印象的でした。この映画のハイライトは個々の死様、かなあ、個人的には。
これを見てたら、「侍」とか「武士道」とか、とてもじゃないけど美学を求めたりなんかできません。
ああ、戦ってやっぱりダメだ、と思いました。嫌悪感しか覚えません。これは「アンチ侍」というか「反戦」映画という見方もできるのかなあ、なんて思いながら見てました。

吾郎ちゃん以外の俳優陣。

個人的に気になっている若手俳優の一人、山田孝之が今作では役所広司さんの次にクレジットされてます。
彼は横顔がいいですね。若いけどワケアリ臭がハンパなくて(最近はそんな役ばっかりやってるイメージ)。彼の悲しい目が好きなんですが、今作でもいい目をしていました。
ただ、作品全体を通しての印象は、可もなく不可もなく、といった感じでした。
一番良かったのは、横顔。賭場で見せた横顔でした。あの表情はたまりません(個人的な趣味)。
ラスト(の一歩手前)、死体に囲まれた戦場で一人佇むときに見せた、笑みとも何ともつかない表情も良かったです。彼が狂ってしまったんじゃないかと、こちらを不安にさせる表情。
あそこで終わっていればなあ。あの後に余計なシーンがくっついて、エンドロールになるんですよね。あのシーンはいらなかった……。

それから、松方さん。彼はもう……快・感!です(笑)。
滑らかな台詞回しがとても心地よかった。彼だけ上手すぎて浮いてたんですけど、彼がいなかったら、この作品に対する満足度は減っていただろうと思います。

他は、私の中では「微妙な立ち位置(すみません)のドラマ俳優」という印象だった、伊原剛志さんや沢村一樹さんが良かったです。
実は役所さん、山田くん、吾郎ちゃん以外のキャストは誰が出演しているのか調べてなかったので(苦笑)、あんな役で二人が出てきて「おっ」と思ったのでした。
若手の面々は、山田くん以外、誰が誰を演じているのか判別つきませんでした。顔は知っているけど名前が、名前は知っているけど顔が、という方が何人か(汗)。
でも、皆さん良かったです。むしろ、顔を知ってる中堅・ベテラン勢のほうが浮いてる印象がありました。

……というか、この作品、全員浮いてるという感じです(一人正統派時代劇をやっていた松方さんは別次元)。でもその噛み合ってない感じが、逆にいいのかも(?)。

おっと、あと一人、岸辺一徳さんにも触れておかなければ!
彼はいいところを全部持っていった、という感じです。彼については見てのお楽しみです。ネタバレしたいけど、したくない!
彼も含め、脇役キャラがインパクト大なので、主演の役所さんがとても印象薄になってしまっているのが何とも……。わざとなのかしら。

とまあ、そんな感じです。まとまりのない感想ですみません(汗)。
グロテスク系の映画は苦手とする私が、なんとかギリギリ耐えられる作品です。これからご覧になる方はご注意を(劇場での公開はもう終わりそうですが)。

『十三人の刺客』
2010年/日本/2時間21分
監督:三池崇史
原作:池宮彰一郎
脚本:天願大介
音楽:遠藤浩二
キャスト:役所広司、山田孝之、伊勢谷友介、沢村一樹、古田新太、高岡蒼甫、六角精児、波岡一喜、石垣佑磨、近藤公園、窪田正孝、伊原剛志、松方弘樹、吹石一恵、谷村美月、斎藤工、阿部進之介、内野聖陽、光石研、岸部一徳、平幹二朗、松本幸四郎、稲垣吾郎、市村正親 他

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