三島由紀夫『仮面の告白』

三島由紀夫の自叙伝的作品とも言われている『仮面の告白』。
暇つぶしにと本屋で手に取り、読み始めたのですが、思いのほかスリリングで楽しんで読むことができました。
感想を書くかどうか、迷ったのですが、せっかく読みましたし、面白い作品だったので書いてみました。

※  ※  ※

自叙伝と言われているとはいえ、彼の人生は何だか謎めいていて(よく知らないだけですけど)、本当にこれが自叙伝なのかどうか私には判断のしようがありません。
ただ、私はこの作品が「自叙伝かもしれない」ということを頭の片隅に入れて読まずにはいられなかったのですが、そうやって読んでみて、なんともいえないスリルがあったことは確かです。
余計な先入観だったとは思うのですが、それを含めての『仮面の告白』なのかなあと思ったり。。
まあ、そのあたりはこれ以上は言えないです。私も三島由紀夫のことはほとんど知らないに等しいので。

内容は周知の通り、主人公「私」による回想録の形式をとっています。話題は性愛と恋愛です。
同級生に対する性的欲望に悩む少年期と、女性とのプラトニックな愛に戸惑う青年期の話が描かれています。

スリルを感じたというのはもう一点、この物語がどういう決着を迎えるのかわからないことによる楽しみでした。
男性に対する性愛と、女性との恋愛との狭間で、「私」は悩みます。
どちらを選ぶのだろうと、思ったんです。どちらも選ばない、という選択肢もあったわけですけどね。
最終的にどうなったのかは、読んでのお楽しみ、ということで触れませんが、まあ「なるほど」という感じです。

それにしても、よくぞここまで詳細に書けたなあ、と、前半は驚きの連続でした。この作品を書いたのは24歳の時らしいのですが、すごいですねえ。
読者の中には嫌悪感を覚える人もいるだろうなあ、というのは思いました。正直なところ。でもまあ、それは仕方ない部分もあるのかなあ。頭で理解はしていても、という面はありますしね。
男性にしか性的魅力を感じないことは特殊であると「私」はよくわかっているんですが、それでも「私」にとってはやはりそれが普通なんですね。肉体美に関する描写が続く中で、ふいに「この時から、私は近江に恋した」という一文が出てきたときはハッとしました。
ああ、そうだそうだ、これも恋なんだ、と。
自分が恋をしているときを思い出してみればわかると思うのですが、「私」が近江に抱く様々な感情は、決して特殊なことではないんですよね。私は恋をしている中で、性的な話題をああやって詳細に文字に書き起こすことはないですから、読んでびっくりしちゃったわけですけど。
それをやってのけたのが凄いなあ、と。

彼の理路整然とした文章は、無機質のようであって、とても人間味溢れています。
まさしく、タイトルにもある「仮面」そのもので、立派な鋼のよろいで身を覆って誰にも自分の本当の姿を見せまいとする強い意志を感じるのですが、それが逆に「弱さ」を感じさせることも、彼は狙って書いているのでしょうか。狙っているんでしょうね。
作家本人が奇異な人生を送っているだけに、どうしても文章から彼の存在を感じずにはいられないです。私が意識していたせいもあるでしょうが。
ビシビシと「三島由紀夫」オーラがぶつかって、作品を楽しむことに集中させてくれないんです。そういうものが『仮面の告白』にはありました。

……とまあ、私が書けるのはこれくらいかなあ。
面白く読めました。三島由紀夫は『金閣寺』→『潮騒』→『仮面の告白』と三作目でした。
彼の文章は、たぶん、私が苦手な部類かなあとは思うんです。でも最後まで読んでしまいました。離してくれなかった、とでも言いましょうか。

人間はこれくらい複雑なほうが面白い、と思う作品です。

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