『黒く濁る村』

今冬公開の中で一番楽しみにしていた、評判の韓国映画『黒く濁る村』を見てきました。

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内容はシネマトゥデイより。

ヘグク(パク・ヘイル)は、長い間音信が途絶えていた父(ホ・ジュノ)の死を知り、生前彼が暮らしていた村を訪れる。村長(チョン・ジェヨン)の指揮により葬儀は滞りなく行われるが、村人たちは父親の死因について固く口を閉ざしていた。自分に対する彼らのよそよそしい態度や、父の死に違和感を覚えた彼はしばらく村に残ることにする。

2時間41分という長い上映時間ですが、その長さを感じることなく、最後まで集中して見ることができました。

(私の知る限り)評判がとても良かったので、ヘビーな作品かとかなり期待していたのですが、思っていたよりずっと娯楽映画で、鑑賞後の最初の印象は「物足りない」。
主人公の父親に死の真相や、生前彼がどんな人間だったのかという、最大の秘密について、ギリギリまでひっぱった割には期待以上のどんでん返しも驚愕の事実もなく、拍子抜け。ラストに待ち構えた真相も、その真相にたどり着くちょっと前に読めてしまって。
全体として、面白くはあったけど、面白さに興奮する作品ではありませんでした。

ただ、俳優陣の演技は素晴らしかったです。
特に村長に媚びへつらう村人3人、ドクチョン(ユ・ヘジン)、ソンマン(キム・サンホ)、ソンギュ(キム・ジュンベ)。
見た目も含めた汚さというか、こびり付いた汚(けが)れは嫌悪感を覚えるほどで、生々しく浮かび上がる暴力性と強欲にはうんざりしました。
いくらメイクで老け顔にしても隠しきれない村長の若々しさ(とにかく目が若い)を含め、表面だけ色を塗った虚構の世界でうごめく、生(なま)の暴力と強欲。
その虚構性には違和感を覚えたのですが、虚構の中だからこそ、それらはより際立ったのかもしれません。

メインの登場人物の中で、女性はただ一人です。ユソン演じるヨンジ。
孤立した村の中で女性が一人となれば、彼女の村での役割は容易に想像がつくわけで、やはり彼女は上記の村人たちに弄ばれているのです。
はっきり言って、気分悪かったです。
村長をはじめ村人3人たちが最後まで憎かったのは(彼らが死んでも何とも思わない)、何より彼女に対しての仕打ちが許せなかったからです。
だから、ヨンジが最後の最後に見せた姿に、私は同じ女として救われた思いがしました。
仮に解決したのが主人公ヘグクの問題だけだったなら、鑑賞後はイライラしていたかと思います。
ヨンジの存在が良くも悪くも、私にとっては救いだったかな、と。彼女の役割がなければ(男のための物語だったなら)、違う映画になっていたかもしれません。

もっとヘビーな作品なのかなあと思っていたので、期待外れと言えば期待外れではありましたが、長さも感じず飽きもせず、なんだかんだで「面白かったなあ」と思える作品でした。

ちなみに、こういう見方もあるようです。
軍事独裁政権下からようやく解き放たれ、歴史が長いとはいえない民主国家でくすぶり続ける旧制度の残滓。これは、合理主義に基づく新世代の若者が、おぞましき構造腐敗を総括し掃き清めようと挑む寓話だ。(映画.comより。清水節・評)
こういう見方は、韓国社会に詳しくないとできないですね……。

『黒く濁る村』(英題:苔 MOSS) 公式サイト
2010年/韓国/2時間41分
監督:カン・ウソク
原作:ユン・テホ
脚本:チョン・ジウ
キャスト:パク・ヘイル、チョン・ジェヨン、ユ・ジュンサン、ユ・ヘジン、ユ・ソン、キム・サンホ、キム・ジュンベ、ホ・ジュノ 他

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