アジアフォーカス・福岡国際映画祭2013(2)~西アジア・南アジア編

9月13日から23日にかけて行われた、第23回アジアフォーカス・福岡国際映画祭の感想です。
前回の東南アジア編に続き、今回は西アジア・南アジアの作品です。※ネタバレあり。

※  ※  ※

( )内の★は個人的満足度。5点満点です。観客賞に投票した作品は、投票した点数を書いています。

『沈黙の夜』(★★★★★)※観客賞投票
英題:Night of Silence
制作年/国:2012年/トルコ
監督:レイス・チェリッキ

トルコの山村を舞台に、刑務所帰りの初老の男と彼に嫁いだ14歳の少女の初夜を描いたドラマ。
乾いた大地が広がる侘しいトルコの山村。政略結婚で見知らぬ男のもとに嫁ぐ若い女性。純白のドレスに身を包み、真っ赤なヴェールを被った彼女の視点から、物語は始まります。この先自分の身に何が起こるのか。恐怖と不安の中で震える彼女の心がひしひしと伝わってきて、序盤はただただ緊張感が続きます。

夫となる男性の寝室にたどり着き、物語はここからこの部屋でのみ展開されていきます。
なかなか打ち解けない新妻に苛立ちを見せながらも、彼女の希望に応えようと必死になる夫。初めはぎこちなかった2人の会話にも、笑顔が生まれてきます。孫ほど年の離れた妻に対して必死になる夫の姿には、愛おしささえ覚えます。しかし、会話が続くばかりで、「初夜のつとめ」を果たせないまま、夜明けが近づいてきます。
実はこの村では、夫婦となった2人がきちんと「初夜のつとめ」を果たしたか、その証拠を村人に渡す(ベッドに布を敷いて行為を行い、その証拠として布を村人に渡さなけらばならない!)という慣習があるのですが、真っ白なままの布を提出するということは、夫にとっては屈辱的なこと。
焦りの中、夫は心の内を吐露します。妻と同じように、夫もこの結婚に、そして自分の人生に、深い苦しみを抱えていました。
夜が明けようとするその時、夫の思いを聞いた妻は覚悟を決めます。そして、夫もまた覚悟を決めます。

このような因習の悲劇を描いた作品で、男性側の悲劇にも焦点を当てていたのは新鮮でした。
ほとんどの場面が寝室で撮られ、そこで行われる二人の会話だけで物語が進むという構成ですが、最後まで全く飽きません。特に、主演男優の演技が素晴らしいです。終盤に見せる彼の悲哀に満ちた表情には、胸が締め付けられます。
この2人がどうなったのか。結末は観客に委ねられています。私には悲劇しか見えませんでした。
夜明け前、それぞれ覚悟を決めた二人の対象的な姿が、深い余韻を残します。

『血の抗争パート1』『血の抗争パート2』(★★★★)
英題:Gangs of Wasseypur
制作年/制作国:2012年/インド
監督:アヌラーグ・カシャプ

インド北部の炭鉱都市ワーセープルで三世代に渡って繰り広げられる、二つのファミリーの抗争の歴史。5時間を超える長さと圧倒的パワーに鑑賞後はクタクタでした・・・。
1940年代のインド分離独立から現代まで60年。インドの歴史とともに変わってゆくマフィアの在り方、そして変わらないもの。濃密な人間ドラマを描きます。

一番の魅力は何と言っても数多いキャラクター達。中でもパート1の主人公サルダール・カーンに惹かれました。強面のスキンヘッドに、鍛えられた肉体。性欲旺盛で、美しい女性に目がなく、よそにも家庭を作るほど。しかし、おちゃめな親バカぶりも発揮。そしてパート1のラストでは、頭に銃弾を受けてもなお敵の前に立ちはだかろうとする強靭さ。
・・・参りました(笑)。
パート1だけで160分もあり、正直終盤を迎える頃には「パート2どうしようかなあ。やめとこうかなあ」と迷っていたんです。でもラストのサルダール・カーンを見て「2も見なきゃ」と。彼の魅力にやられちゃいました。だって、頭に穴あいてるのに立ち上がるんですよー!

パート2は、サルダールの次男ファイザルが主人公。大麻に溺れ、父親と比べると情けなく、頼りない男だった彼が、父と兄の死を機に冷酷な男へと変貌していくさまはお見事でした。俳優さんの演技も素晴らしかったです。

かつては石炭や鉄など、金になる利権争いが軸であった抗争も、次第に復讐そのものが目的と化していきます。最後の銃撃戦は、長年に渡る抗争の間に流れた血と涙を洗い流すような、どこか不自然なほどに激しいものでした。そして、味方かと思っていた人物の裏切りに、「復讐」というものの恐さを知ることになります。
復讐は憎しみと悲しみ、そして新たな復讐=悲劇しか生まない。
そんな、哀しい映画でもあるんですね。人間が容赦なく切り刻まれるし、目を背けたくなるシーンもたくさんあります。でも、なぜ、ワクワクしてしまうんでしょう。楽しんで見ている自分にちょっと怖くなりました(楽しむための映画なんですけどね)。

『シャンハイ』(★★★)※観客賞投票
英題:Shanghai
制作年/国:2012年/インド
監督:ディバーカル・バナルジー

「経済発展」のスローガンのもとに都市開発が進むインドの地方都市が舞台。開発反対運動の指導者の不審死をめぐり、立場の異なる三人の男女が真相を追う、政治サスペンスです。
昨年の傑作サスペンス『カハーニー』のような出来を期待していたけど、いたって普通の娯楽作品でした。もうちょっと緊張感があれば良かったかなあ。
タイトル「シャンハイ」はもちろん、中国の「上海」のこと。タイトルの由来については、劇中でも語られるのですが、上映後のQ&Aで、監督が詳しく説明してくださいました。
インドでは、中国は途上国から経済発展を遂げたモデルとして、強く意識されているらしく、「シャンハイのように」と口にする政治家が多いそうです。ただ、急激な経済発展の中でインドは揺れていて、経済発展で得られるもの、失うもの、そもそも「発展とは何か」といったことについて、議論がなされているそうです。監督はその辺りを描きたかったようですね。
主人公三人のうち、男性二人はボリウッドでも人気の俳優さんだそうで、二人とも存在感があり、かっこよかったです。日本では見る機会の少ない、アジア各国のスターをスクリーンで拝めるのがアジアフォーカスのいいところです。

『パルウィズ』(?)
英題:Parviz
制作年/制作国:2012年/イラン
監督:マジド・バルゼガル

裕福な父親と2人暮らしの中年ニートが主人公。父親の再婚を機に家を追い出され、変貌していく彼の姿を描きます。
1回目の上映で途中で寝てしまったので、翌週に再びトライしたのですが、また寝てしまいました。評判が良い作品だけに、最後まで見られなかった自分にがっかり・・・。

※  ※  ※

西アジアはトルコ1本、南アジアはインド2本、イラン1本、でした。
トルコの『沈黙の夜』は傑作。先日の記事で、インドネシア映画『聖なる踊子』が今年のベスト1と書きましたが、この作品も並ぶくらい好きです。
インド映画はよく「歌とダンス」と言われますが、そうでない作品も楽しいです。昨年の『カハーニー』も、今年の『シャンハイ』はそういうものとは無縁のサスペンスでしたが、最初から最後まで楽しめましたし。『血の抗争』はダンスはなかったですけど、音楽(の歌詞)がうまい具合にストーリーを補完していました。長いのですが、いろいろな要素をたっぷり詰め込んでいて、「これぞ娯楽映画」といったところ。
『パルウィズ』は、ただただ残念・・・。評判良かったんですけどねー。私には合わなかったのかなあ。今年のアジアフォーカスで居眠りしちゃった作品はこれだけでした(ちなみに昨年は2本ほど)。

感想第2弾は以上で・・・。
最後は東アジアとその他地域の作品の感想をまとめたいと思います。

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