アジアフォーカス・福岡国際映画祭2014(3)~西アジア・その他編

9月12日から21日にまで開催された『アジアフォーカス・福岡国際映画祭2014』の感想。
台湾編東アジア・東南アジア編に続き、最後は西アジア・その他地域の作品です。

※ネタバレあり。

※  ※  ※

( )内の★は個人的満足度。5点満点です。観客賞に投票した作品は、投票した点数を書いています。

『予兆の森で』 (★★★★★)
予兆の森で
英題:Fish & Cat
制作年/製作国:2013年/イラン
上映時間:141分
監督:シャーラム・モクリ
出演者:ババク・カリミ、サイード・エブラヒミファル、シヤワシュ・チェラギプール、アベッド・アベスト 他

141分をワンカットで撮影したという話題のイラン映画。
これは面白かったです!個人的にはロウ・イエ監督の『ブラインド・マッサージ』と並んで今年のアジアフォーカスベスト映画です。

森で学生が行方不明になったという事件を基にした(と映画の冒頭でも説明があります)作品。
ですので、どのような事件が起き、誰が、誰に、どのような形で殺されるのか。そのスリル感がずっと続くわけです。
だからドキドキしながら構えて見ているわけですが、何か起きるようで、何も起きない。

舞台は怪しげな雰囲気を漂わせる湖畔。
カメラは、凧揚げ大会に集まった学生たちを追うのですが、湖を何度も周回する中で、同じシーンが視点を変えながら何度も繰り返されていく。
いつの間にか、物語を楽しむのではなく、その「手法」を楽しむようになり、誰が殺されるのかなどそこまで気にならなくなっていました。

上映後のQ&Aで、監督は「時間」の表現を模索したと仰っていました。同じシーンを違う視点でワンカットで撮影する、という大胆な手法。撮影中も一つのミスが命取りとなるので、大変だったようです。その撮影の舞台裏について、Q&Aでも質問が集中しましたが、この手法を見事成し遂げた、監督・スタッフ・俳優陣の努力に脱帽です。最後まで驚きの連続で、上映後の質疑応答もとても楽しかったです。
好き嫌いはわかれる作品かと思いますが(答えは出ないので)、表現とか制作に興味がある人にはたまらないんじゃないでしょうか。何もかも完成された作品に身をゆだねて見るのも楽しいけど、制作の裏側を考えずにはいられない、映画の舞台裏まで引き込ませてくれる作品でした。

『兄弟』 (★★★★)
 兄弟
英題:Brother
制作年/製作国:2014年/フランス・グルジア
上映時間:98分
監督:テオナ・ムグヴデラゼ
出演者:イラクリ・バシル・ラミシヴィリ、ズカ・ツィレキゼ、ナターシャ・シェンゲライア 他

1990年代初頭、内戦で混乱するグルジアの首都トリビシで生きる若者達の姿を丁寧に描いた良作。
主人公は素晴らしいピアノの才能を持った少年ダトゥナと、その兄ギオルギ。
1990年代に青春時代を過ごした若者たちは、グルジアでは「ロスト・ジェネレーション(失われた世代)」と呼ばれているそうです。物語はそんな若い兄弟の日々を軸に進んでいきますが、混乱する社会の希望として輝く少年(ダトゥナ)と、目標を失い、悪へ染まっていく青年(ギオルギ)の対比がとても興味深かったです。

幼いがゆえに、純粋な愛(ピアノへの愛、家族への愛)だけで生きていくことができるダトゥナ。
対照的に、子どもから大人への階段を上る途中のギオルギは、経験も知識もあるがゆえに悪へと手を染めていくんですね。政治の混乱で学校は休校となり、手持無沙汰となった青年たちが次々に悪の道へと進んでいく。
戦争の「犠牲」となる若者たち。その「犠牲」は決して一言で片づけられるものではなく、年齢や性別、境遇などによってその内容は大きく異なるんですね。
ダトゥナとギオルギの対比に、深く考えさせられました。

物語は終盤テンポが悪くなり、ダレてしまって、鑑賞直後はそれが残念に感じたのですが、それは監督の意図でした。
この作品は内戦の「悲劇性」に焦点をあてた反戦映画などではなく、あくまでも当時を生きた人々に寄り添い、彼らの思いに迫った人間ドラマ。
物語がダレてしまったのは、それが生き方を見失ったギオルギの日々であり、思いだったから。
人々に寄り添うことを最後まで貫いた監督の誠実さを強く感じる作品でした。

ダトゥナとギオルギを演じた2人はそれぞれ今回が初めての映画出演だったそうなんですが、素晴らしい演技でした。
ダトゥナ少年が奏でる美しいピアノの音色と、ギオルギの弟に対する純粋すぎる愛が、哀しい余韻を残します。

『絵の中の池』 (★★★★)
絵の中の池
英題:The Painting Pool
制作年/製作国:2013年/イラン
上映時間:96分
監督:マズィヤール・ミーリー
出演:シャハブ・ホセイニ、ネガール・ジャワヘリアン、セパーラド・ファルザミ、フェレシュテ・サドルオラファイ、シヤマック・アーサイ 他

軽い知的障がいを抱えた夫婦とその息子の生活を軸に、夫婦・家族の在り方を問うイラン映画。
自分の親が他の親と違うことに気付いた息子の葛藤と叫び、息子の思いに応えられない自身に涙を流す両親の姿に胸が詰まります。

障がい者だけでなく、同時に健常者だけの家族も描くことで、障がいの有無関係なく、夫婦や家族にとって大切なものは何かを考えさせる物語になっています。
障がいの有無は確かに生活に大きな影響を及ぼしますし、きれいごとでは済まされないこともたくさんあるのですが、人と人が共に生きていく中で、どんな立場や状況にあっても変わらないものがあるということを、2つの家族を描くことで浮かび上がらせます。
問題は完全には解決しないのですが、それぞれがその大切なことに気付き、未来へ一歩踏み出したラストに救われました。

『ひとり』 (?)
英題:Little Brother
制作年/製作国:2013年/カザフスタン
上映時間:94分
監督:セリック・アプリモフ
出演:アルマット・ガリム、アリシェル・アプリモフ 他

小さな村でひとり逞しく生きる少年の健気な姿を描いたカザフスタン映画。
やや単調で中盤からぐっすり寝てしまいました…。
風景が美しかったのと、大人の少年への態度の酷さが印象に残っています。

『私は彼ではない』 (?)
英題:I’m not him
製作年/製作国:2013年/トルコ・ギリシャ・フランス
上映時間:129分
監督:タイフン・ピルセリムオウル
出演:エイルジャン・ケサル、マルヤム・ザレ 他

こちらも寝てしまいました。ストーリーもほとんど覚えてない…。

※  ※  ※

以上、アジアフォーカス・福岡国際映画祭2014の鑑賞記録は終わり。
書き終えるのに、だいぶ時間がかかってしまいましたね(野球の日本シリーズとかあって(心が)忙しかったので…)。やっぱりこういうのは終わってすぐに書かないと(と毎年同じことを言う…)。

すでに書いたように、今年のベストはロウ・イエ監督(中国)の『ブラインド・マッサージ』、そしてイランの『予兆の森』です。
前者は圧倒的な演出と演技で人間ドラマを、後者は141分ワンカット撮影という大胆な映像表現を楽しませてもらいました。アプローチは異なる2つの作品ですが、どちらも映画の醍醐味を堪能できました。

来年のアジアフォーカスも楽しみです。
映画祭の関係者の皆さま、そして遠くから福岡にお越しになった映画関係者の皆さま、今年もありがとうございました!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA