『薄氷の殺人』『グエムル 漢江の怪物』『トラッシュ! この街が輝く日まで』

1月に鑑賞した映画の感想です。
1つの記事で書くにはちょっと分量が少ないものをまとめています。

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『薄氷の殺人』
中国の寂れた地方都市で起きた連続猟奇殺人事件の真相に迫る元刑事の男の姿を、独自の映像美で描いたサスペンス映画。第64回ベルリン国際映画祭で金熊賞(作品賞)と銀熊賞(男優賞)を受賞しています。

ストーリーはシネマトゥデイより。

中国・華北地方で切断された死体の断片が次々に発見され、刑事ジャン(リャオ・ファン)が捜査に当たるが、容疑者の兄弟が逮捕時に射殺されたため詳細は誰にもわからなくなってしまう。5年後、しがない警備員となっていたジャンは以前の事件と手口が類似した猟奇殺人が発生したことを知り、独自に調査を開始。やがて、被害者たちはいずれもウー(グイ・ルンメイ)という未亡人と近しい関係だったことを突き止めるが……。

一番の見所は映像。
道も家も、人々が吐く息さえも寂れた凍てつく地方都市の姿を、独特のカメラワークで映します。1シーン1シーンが1枚の絵として成立する美しさ。言葉ではなく、映像で魅せます。最後の最後までスクリーンに釘付けでした。
ストーリーは引用した通り。事件の真相を追っていく前半は緊迫感あるサスペンスで良かったのですが、主人公ジャンが美しい未亡人ウーに惚れて彼女に執着し始める中盤から、テンポが悪くなってしまったのが残念。主人公と女性との絡みが長かったかなあと。
観覧車のシーンやラストダンスなど、各々のシーンはいいのですが、それがすべて繋がると怠くなっちゃうというか。
期待していただけに、後半は少し残念でした。でも、映像は本当に素晴らしかったです。

この映画、原題は『白昼花火』、英題は『BLACK COAL, THIN ICE』となっているのが面白いですね。2つのタイトルがそれぞれ異なる意味で映画の象徴となっています。これが邦題だと『薄氷の殺人』になるんですね。
邦題も悪くはないんですけど、できれば「炭鉱」を意味する言葉も入れてほしかったかな。

薄氷の殺人
『薄氷の殺人』
原題:白昼花火
英題:BLACK COAL, THIN ICE
2014年/中国・香港/1時間49分
監督・脚本: ディアオ・イーナン
キャスト:リャオ・ファン、グイ・ルンメイ、ワン・シュエビン 他
※1月17日、KBCシネマにて鑑賞。

※  ※  ※

『グエムル 漢江の怪物』
こちらはDVDで鑑賞。前々から気になっていた作品で、やっとこさの鑑賞です。

ストーリーはシネマトゥデイより。

ソウルを流れる大河の漢江(ハンガン)に、謎の怪物「グエムル」が現れ、次々と人を襲う。河川敷で売店を営むパク家の長男カンドゥ(ソン・ガンホ)の中学生の娘、ヒョンソ(コ・アソン)も怪物にさらわれてしまう。カンドゥは妹ナムジュ(ペ・ドゥナ)らとともに病院に隔離されていたが、携帯電話に娘からの連絡が入ったことから一家で脱出を試みるが……。

監督は、『殺人の追憶』や『母なる証明』などの作品で鬼才と呼ばれることもあるポン・ジュノです。
『殺人の追憶』も『母なる証明』も、犯罪を通して人間の深部に迫る社会派ドラマですが、この作品は突然街に現れた怪物相手に奮闘する一家をコミカルに描いたエンタメ作となっています。

ハリウッドのこの手の映画とは異なり、怪物が比較的小さく(そして一匹である)、あくまでも「ソウル」という街が舞台なのでスケール感はないですが、親しみやすさがあります。
ソン・ガンホ演じる不器用な男カンドゥと、彼をバカにしながらも共に生きる家族たち。
愚かと紙一重の勇敢さ、そして泥臭さがとても魅力的です。平凡な日々を過ごしていた市民が不条理(怪物)や組織(国)に振り回される姿は他人事とは思えず、彼らを応援しながら見ました。
決して気持ちのいい結末ではないですが、鑑賞後は不思議な爽快感が残ります。

コメディもシリアスも何でもこなすソン・ガンホはもちろんのこと、9年前のちょっと若いパク・ヘイルやペ・ドゥナの魅力もたっぷりです。

グエムル

『グエムル 漢江の怪物』
英題:THE HOST
2006年/韓国/2時間0分
監督・原案・脚本: ポン・ジュノ
キャスト:ソン・ガンホ、ペ・ドゥナ、ピョン・ヒボン、パク・ヘイル 他
※1月18日、DVDにて鑑賞。

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『トラッシュ! この街が輝くまで』
ブラジルの貧困街でゴミ漁りをして暮らす3人の少年が、財布を拾ったことから事件に巻き込まれ、解決していく姿を描いた青春映画です。
監督は『リトル・ダンサー』『愛を読むひと』、そして『めぐりあう時間たち』(私のオールタイムベスト)などのスティーヴン・ダルドリー、脚本を『ラブ・アクチュアリー』などのリチャード・カーティスが手掛けています。

ストーリーはシネマトゥデイより。

ブラジル・リオデジャネイロ郊外でゴミ拾いをして暮らす3人の少年は、ある日ゴミ山で一つの財布を見つける。その財布には世界を揺るがすとんでもない秘密が隠されていたことから、警察も総力を挙げて捜索に乗り出す。少年たちは「正しいことをしたい」と財布に隠された謎を解明すべく、警察のしつこい追跡をかわし命懸けで真実を追い求めていくが……。

オーディションで選ばれたという無名の少年たちの躍動感あふれる演技が最大の魅力。
ブラジルが抱える貧困問題、政治や警察の腐敗を風刺するシーンもあるのですが、少年たちの成長を描いた冒険譚として見たほうがいいかも。社会派ドラマとして見るにはインパクトに欠けます。
物足りなさを感じるのは、作り手側の「思い」でしょうか。少年たちと作り手との間に距離を感じてしまいました。あくまでも「外から見た」ブラジルというか。ストーリーがご都合主義だから、ということではなく、問題に対する意識の甘さと言うかぬるさを感じました。
期待していただけに少し残念だったかな。
ただ、3人の少年は本当に魅力的。彼らに出会えただけでも、見た甲斐がありました。

トラッシュ!
『トラッシュ! この街が輝く日まで』
英題:TRASH
2014年/イギリス・ブラジル/1時間54分
監督: スティーヴン・ダルドリー
脚本: リチャード・カーティス
キャスト:リックソン・テベス、エデュアルド・ルイス、ガブリエル・ウェインスタイン、マーティン・シーン、ルーニー・マーラ 他
※1月29日、TOHOシネマズ天神にて鑑賞。

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