アジアフォーカス・福岡国際映画祭2017(3)~東南アジア他

前回に続き、アジアフォーカスの感想です。
今回は東南アジアを舞台にした作品を中心に。これで感想のまとめは最後になります。

( )内の★は個人的満足度。5点満点です。

『バイオリン弾き』(★★★★★)
バイオリン弾き_ポスター
英題:Violinist
2016年/イラン/74分
監督:モハマド=アリ・タレビ
キャスト:キアヌーシュ・シャーナズィ、サバ・ファダイ、サマン・ノデヒ 他

主人公のキアヌーシュを始め、キャストは皆テヘランに住む実在の市井の人々。
台本もないままテヘランの街へ撮影に出かけた監督が、街で出会った人々と作り上げていった物語は、厳しい現実の中にも確かに存在する人間の良心を、手のひらで優しく掬ったような作品でした。
Q&Aで監督が仰った「カメラをペンのように」との言葉が心に残りました。
路上のバイオリン弾き、キヌアーシュさんが奏でるイラン音楽の力強く美しい響きもとても良かったです。

『はぐれ道』(★★★★★)
はぐれ道_ポスター
原題:Jagat
2015年/マレーシア/76分
監督:サンジェイ・クマール・ペルマル
キャスト:ハラヴィン・ラージ、ジブレイル・ラジュラ、キューベン・マハデヴァン 他

舞台は1991年の北マレーシア。少数民族であるインド系住民の苦悩の日々を、大人と子ども、両者の視点から描いた作品。
主人公の少年アポイはマイケル・ジャクソンが好きで、ギャングに憧れる少年。両親も教師も自分の気持ちをわかってくれないと不満を抱いている彼は、次第にギャング達と行動を共にするようになります。
子どもの悪ふざけと大人達のリアルな犯罪、並行して描かれる両者がやがて交わり…。
大人は自らの意思で住む世界を選ぶことができますが、子どもは選ぶ前に飲み込まれていく。
その結末が悲しいです。

『ベンとジョディ~珈琲哲学 第二章~』(★★★★)
ベンとジョディ_ポスター
英題:Ben & Jody
2017年/インドネシア/117分
監督:アンガ・ドウィマス・サソンコ
キャスト:チコ・ジェリコ、リオ・デワント、ルナ・マヤ 他

タイトルに「第二章」とあるように、珈琲の名産地であるインドネシアを舞台に珈琲道を探求する若者たちの奮闘を描いた『Filosofi Kopi』(2015)の続編。
過去に本映画祭で前作が上映されたことはなく、なぜか続編だけが上映されるという笑。というわけで前作は未見ですが、楽しめました。

ジャカルタで人気カフェ「Filosofi Kopi(珈琲哲学)」を営んでいたベンとジョディの二人がワゴンカフェで国中を巡る旅に出る・・・というのが前作の話。
今作では、そのワゴンカフェを一緒にやっていた仲間が辞めることになり、再びジャカルタでカフェを再開することにした二人の奮闘ぶりを描きます。
バリスタ職人のベンと経営のジョディに、新しい仲間の二人の女性を交えて繰り広げられる人間模様が面白かったです。また、店の中だけでなく外(コーヒー農園)にスポットをあてた物語も、コーヒー豆の産地インドネシアならではで興味深いものがありました。

監督は、アジアフォーカスで過去に『モルッカの光』『プラハからの手紙』が上映されているサソンコ監督。2本とも大好きな作品で、また彼の作品を見ることができてとても嬉しかったです。今作も過去上映された2本同様、見応えのある作品でした。
できれば前作も見たかったですけどね笑。いつか見る機会があるでしょうか。

『ワンダーボーイ・ストーリー』(★★★★)
ワンダーボーイ_ポスター
英題:Wonder Boy
2017年/シンガポール/96分
監督:ディック・リー、ダニエル・ヤム
キャスト:ベンジャミン・キン、ジュリー・タン、コンスタンス・ソン、ミシェル・ウォン 他

シンガポールのシンガーソングライター、ディック・リーが自らの半生を映画化した青春映画。
1970年代の独立して間もないシンガポール。中華系の裕福な家庭に育った若き日のディック・リー(リチャード・リー)は、いつか自作の曲で歌手になりたいと夢を見ますが・・・。
当時のシンガポールで音楽といえば、欧米の楽曲のカバーが主流。そんな中あえてローカルな音楽で挑戦し、音楽を通してシンガポールのアイデンティティを問うた若き日のリチャード。
夢への挑戦と挫折、友情、家族、初恋など、ほろ苦いエピソードも詰まった青春物語が、ヒット曲の数々と色彩豊かなファッションで鮮やかに紡がれます。
また、若き日のディック・リーを演じたベンジャミン・キンを始め、若い俳優さん達がとても魅力的で、最後まで楽しく見ることができました。

ディック・リーさんの曲はどの曲も聴くのは初めてだったのですが、そんな私にもどこか懐かしい、親しみやすい曲ばかりで良かったです。特に彼の名を一躍有名にした「Fried Rice Paradise」は、映画祭が終わってもしばらく聴いてました。

『ダイアモンド・アイランド』(★★★★)
ダイアモンド・アイランド_ポスター
英題:Diamond Island
2016年/カンボジア・仏・独・カタール/99分
監督:デイヴィ・シュー
キャスト:ヌオン・ソボン、ノウ・チェニク 他

カンボジアの首都プノンペンに建設中の一大開発地域「ダイアモンド・アイランド」。
出稼ぎのために故郷の村を出て、ダイアモンド・アイランドにやってきた青年ボラ。高層ビルの建設現場で働く日々は豊かな生活とはほど遠いながらも、友情に恋にと、それなりに楽しい時間も過ごしていました。ところがある日、5年間行方が知れなかった兄ソレイと思わぬ再会を果たし、少しずつその生活に変化が生まれていきます。

日々変わりゆく街に生きる若者たちの日常を、切なくも鮮やかに描き出した作品です。
若者たちの刹那的な日々が、痛ましく、羨ましく。
キスシーンでこれほど心揺さぶられたのはいつ以来だろうと。ネオン輝く眠らぬ街でそっと重ねられた唇が、そのシルエットが、映画館を出てもしばらく目に焼き付いていました。

『ベトナムを懐(おも)う』(★★★★)
ベトナムを懐(おも)う_ポスター
英題:Hello Vietnam
2017年/ベトナム/88分
監督:グエン・クアン・ズン
キャスト:ホアイ・リン、チー・タイ、トリッシュ・レ 他

舞台は1995年のNY。祖国を離れ、遠い異国で暮らすベトナム人家族三世代の確執と和解を描いた物語。
祖父の美しい祖国の思い出、父の悲しみの歴史、娘の新しい価値観。
たとえ家族であっても、共有できない、歩み寄るので精一杯なことがあるという現実を突きつけられます。年老いて異国の地へ移り住んだ祖父の戸惑いも、見ていて辛いものがありました。
お世辞にも完成度の高い作品とは言えないのですが、リアリティよりも、それぞれのキャラクターの思いこそが大事なのかなと。

監督は、2015年に本映画祭で上映され、観客の度肝を抜いた『超人X』のズン監督。『超人X』とは全く異なるジャンルで、今回もある意味驚かされた形に・・・。
また、祖父の回想シーンで出てくる少年少女が、2016年にアジアフォーカスで上映された『草原に黄色い花を見つける』(映画祭での邦題は「緑の野に黄色い花」)に出演していた子役の2人でした。こうしたスクリーンでの再会も嬉しかったです。

※  ※  ※

以上で、2017年のアジアフォーカス・福岡国際映画祭の感想は終わりです。
3か月以上も経っていると忘れていることも多くて、鑑賞後にツイッターに記録していた感想をほぼ丸写ししたような感じです^^;
すっと思い浮かぶシーンもありますが。。
また今年も行く予定です。どんな作品に出会えるか、今から楽しみです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA