「ジャン・エヴァレット・ミレイ」展

ミレイ展
昨日、北九州市立美術館で開かれている「ジョン・エヴァレット・ミレイ」展に行ってきました。
日本ではあまり有名でない作家で、日本での大きな展示会は今回が初めてのようでした。私も初めて聞く名前で、どのような絵を描いていたのか全く知らなかったのですが、知識ナシでも十分に楽しめました。

ミレイは19世紀中頃の英国の画家。今回の展示会に連れて行ってくださった方の話によると、日本で人気のある印象派(マネ、モネ、ルノワール等々?)より少し前の画家だそうです。私の印象としては、人物を非常に写実的に、見たまんま忠実に描いているという感じでした。その人物画も表情の変化が乏しく(目には力がありました)、きりりとした表情の絵が多かったです。上流階級の肖像画を描いてお金を稼いでいたようで(ミレイに肖像画を描いてもらうことがステータスとなるほど人気が高く評価されていたようです)、まあそんな感じの絵が多かったです。
私はそれらの作品よりも、庶民の生活の様子を描いていた雑誌の挿絵のほうが好きでした。

でもタイトルの付け方はどれも素晴らしかったです。「タイトルを探すのは、絵をかくのと同じくらい難しい」という誰かの言葉が解説にあったのですが、いろんな詩や小説等の作品から取られていたりしました。
私が一番気に入ったタイトルは『Trust me』(信じてほしい)。
手紙を後ろに隠した娘と、白髪の父親が向かい合っている絵なんですが(上流階級の父娘っぽかったです)、どちらが「Trust me」と言っているかは観賞者の判断に任せる、という絵なんですね。私ははじめは娘が言っているのかと思ったのですが、じっくり観ていると、父親の表情から父親が言っているのではないかと思えてきました。
またそれはどういう状況で「Trust me」と言っているのか、そういうことをあれこれ考えることができて随分楽しく観賞できる作品だと思いました。

あと、彼が愛したというスコットランドの風景画が幾つか最後に展示されていたのですが、私はそれらの作品群が一番気に入りました。
人物画に定評のある画家なのだと思うのですが、その人物画にあまり魅力を感じられなかった私には、最後の最後に一番良いものに出会えた気がして嬉しかったです。
特に嬉しかったのが、描かれていた空が私の好きな空そのものだったことです。「○色」と言葉では言い表せない空の色彩が見事に描かれていて、うっとりしてしまいました。
写真もそうですが、私はやっぱり人物が対象のものよりも風景に心を奪われやすい傾向があるのかもしれません。

今回、美術館で生の作品と接して思ったのは、実物だと近づいたり遠ざかったり、いろんな距離や角度から絵を観賞でき、それによっていろいろな発見ができるということです。美術館にはあまり行ったことがないのですが、今回行ってみて、観賞の楽しさを知ることができ、とても良かったです。
昔シャガール展を観に行ったことがあるのですが、その時の記憶はほとんど覚えていないんですよね。今回楽しめたのは、年齢を重ねて自分なりに物事を楽しむ方法を見つけてきたおかげかな、と思いました。それが美術鑑賞として正統なものなのかはわかりませんが。
でも私は基本的に、芸術や文化といったものは何よりも観賞者が何を感じたかが大事(「観賞者第一主義」)だと思っているので、誰かに観賞法を指示されることなく自由に感じ、考えることができたので、良い時間を過ごすことができました。もちろん、知識があればより楽しめたとは思いますが、素人観賞もなかなか良いものだと思います。

今までは気になる展示会があっても何となく1人では行けなかったのですが、今回行ってみて、これからは1人でも行けるような気がしてきました(笑)。
面白そうな展示会があれば行ってみたいものです。

ちなみに、画像は入場券です。券に描かれている「オフィーリア」(シェークスピア『ハムレット』より)という作品は彼の代表作で、今回の展示の目玉だったようなのですが、私も一緒に行った方もいまいちでした(汗)。

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