玉木宏主演『真夏のオリオン』の試写会に行って来ました。
先に書いた『スラムドッグ$ミリオネア』と比べてしまうと(比べられるものでもないのですが)どうしても満足のできる作品ではなかったので、辛口です。ネタバレです。
舞台は第2次世界大戦。玉木宏演じる主人公・倉本は「イ-77」という潜水艦の艦長として、太平洋で米国鑑との闘いを繰り広げていました。
物語は彼と彼の友人で、潜水艦イ-81の艦長を務める有沢(ケミストリーの堂珍嘉邦)、有沢の妹で倉本の恋人でもある志津子(北川景子)が軸となって…と言いたいところなのですが、見所はイ-77と米国の駆遂鑑パーシバルの戦いでしょう。
パーシバルのスチュワート艦長と玉木の心理戦、また2艦の戦いの様子を上空から見たシーンなどはなかなか面白かったです。
それ以外は正直要りませんでした。
特に有沢のシーンはほぼすべて無いほうが良かったと感じたくらいです。
一緒に観た彼も「堂珍を出させる為に無理矢理作ったんじゃないかと思えた」と言ったほどです。俳優が本業ではない彼の演技は思っていたほど悪くはありませんでしたが、いかんせん脚本がダメダメなので、悪い印象を残してしまっただけでした。
また彼は反戦的で、そのことをすべて台詞で言ってしまっていたのもいけませんでした。戦争の悲劇性、虚しさなんてものは言葉にしなくてもわかります。実際にこの映画の中でそれらを感じたのは、回天(人間魚雷)に乗るために潜水艦にやってきた軍人さんの演技と、終戦の瞬間のシーンです。
有沢にうんざりしてしまったのは、出てくるたびにそのことを口にするからでもありました。イ-77烹炊長(ドランクドラゴンの鈴木拓)や機関長(吉田栄作)が淡々と己の仕事に取り組む姿のほうが、かえって戦争の虚しさを表現できていたように思えました。
志津子役の北川景子も、沢尻エリカのほうが良かったんじゃないかと最初のシーンで思ってしまいました。印象が薄すぎました。
何というか無駄が目立ってしまう映画でした。
文句ばかりになってしまいましたが、もちろん良かったと思える点も幾つかありました。
上記にもあるように、印象に強く残ったのは回天の軍人さん(何故かイケメンばかり)です。
艦長の倉本は回天を好まず、彼らを回天に乗せようとしません。しかし、回天に乗るために海の中までやってきた彼らは「乗せてくれ」と懇願します。それは、それが彼らの仕事、役目だからです。
艦長に仕事を与えられない彼らのやるせなさ(決して回天に乗ることが正しいなどとは思いませんし、乗らないに超したことはありませんが)、気持ちのやり場をどこにもぶつけられず苦しむ彼らの姿は、回天という人間魚雷の惨さを別の意味で表しているように思いました。
俳優さんもよく演じていたように思います(ベテラン俳優が少ないというのもありますが、彼だけでなく若手俳優が頑張っているなあという印象を持ちました)。
それから、潜水艦という特殊な環境、戦場のシーンは、今までそれらを描いた作品を観たことのない私には新鮮でした(酸素がなくなっていくことや潜水艦が壊れて沈んでいく様子等々、緊迫感がありました)。
外でのシーン(まさに有沢に関わるシーン)を減らし、潜水艦内部のシーンを増やせば、より圧迫感や閉塞感が伝わってきて良かったのでは、と思いました。
あとは、玉木宏の声のかっこよさでしょうか。際立っていました。
彼の声はずるいです。本当にずるい!(声だけで酔います)
そして、彼は美味しく食べる演技がとても上手だというのも新しい発見でした。観終わった後にカレーとトマトが食べたくなりました(笑)。
ベテラン俳優は吉田栄作の他に、吹越満や益岡徹などがいましたが、述べたように脚本がダメダメなので、彼らが生かされていないように思いました(好きな俳優さんだけに残念でした)。
いっそ若手だけにしたほうが良かったかもしれません。彼らでなければならなかった理由が最後まで見えませんでした。
ちなみに、『真夏のオリオン』というのは音大に通っていたという志津子が書いた曲の題名です。倉本にお守りとして渡したその楽譜が、この映画のキーワードとなっています。しかし、この曲に関するエピソードも不要といえば不要だったかもしれません。
…と、それは言い過ぎですが、とにかく無駄なシーンが多すぎた印象です。もっと面白く作れたように思うだけに、残念でした。
私は映画や音楽等の感想は、基本的に良いと思った作品の感想しか書かないようにしています。しかし、この作品は感想をお蔵入りにしてしまうにはもったいないように思ったので書きました。印象に残ったシーンもあったので。
作中にはドラマ『のだめカンタービレ』のネタも出てきます。玉木ファンの方は(私が言わずとも行かれるでしょうが)、楽しめるかもしれません。
厳しい評価ですね。でも、映画のレビューって全部を全部、褒めてしまうと参考にならないって感じる事もしばしば。雑誌に掲載されているダウンタウン松ちゃんの映画評は、やたら厳しいんですが、逆にホンネでそう感じているのだなという判断材料になってたりします。不満を口にする事に抵抗はありますが、云わねばならない事もありよね。
シリーズとして位置づけられる「亡国のイージス」は観ましたがやはり、「これが話題作らしいけど、日本映画は大丈夫なの?!」と思いました。
最近はイケメン俳優さんが多くて、正直、ついていけません。「イケメン」というフレーズが乱立しているから仕方のない部分もあるますが、ドラマのキャスティングに乱立してしまうと、ピントがぼやけてしまう気もします。二枚目俳優を起用するなら、そのカッコよさを引き立てようと自分なら考えるだろうから横並びで配列はしないだろうなぁ…と。
>メロンぱんちさん
思ったことをそのまま書いたために毒々しくなってしまいましたかね。本性が見えてしまったかな?(笑)
この作品、嫌いではないんです。題材は面白かったので「もっと良い映画にできたはずなのに」と、もどかしくて。言わずにはいられませんでした。
ドラマのイケメン率は確かにすごいですね。
少女漫画原作のドラマは特に多いですが、ヒロインと多人数のイケメン、という構図は男性がハーレムに憧れる(?)のと一緒なんです(笑)。女性受けを狙えば自ずとああなってしまうんだと思います。
この映画もイケメンくんは多かったですが、彼らイケメン(若手)の頑張りが映画を盛り上げていたように思いました。戦場において苦境と闘う若者の姿とマッチしていたんでしょうか。
記事でも書いた、回天に乗る軍人さんの中で中心となっていた俳優さん(すみません、名前がわかりません)は見るからに正統派のイケメンで、意思の強さが外見からも感じられました。それが役柄に合っていて、そのへんは上手い配役だったようにも思います。
純粋な若者が戦争に駆り出される、という状況を描く時は正統派イケメンは使いやすいのかも、と思ったりもしました。
『亡国のイージス』は未見なのでわかりませんが、この映画は戦争映画というよりはエンタメ系に近い感じです。流血シーンもほぼないに等しい位なので、気負わずに観られる映画です。
強い反戦メッセージも有沢の台詞くらいでしたし、感動の押しつけもなく(狙っているのはわかりましたが)、「戦争を扱ってこんなに爽やかな映画ができるのか」と新鮮でもありました。
そんなわけで、あれこれ書きましたが個人的にはそこそこ気に入っているんです(^^;。
本当に合わない映画は何も書けませんからね。。