『クロイツェル・ソナタ』の話

昨晩は急遽友人にヴァイオリンのコンサートに誘われ(その友人も別の友人に急遽誘いを受け、私にも「一緒に行かないか、タダだよ」と話を持ちかけてきた)、行ってきました。
仕事の後に、しかも先日オーケストラを聴いたばかりですし、さらに日曜はチェロ鑑賞。ちょっときついかなと思いましたが、踏ん張って行ってきました(笑)。

昨晩のはチャリティーコンサートということで、先日の九響の定期演奏会と比べると肩の力を抜いて鑑賞できました。というか、お客さんが緊張感なくて……(汗)。
くしゃみはまあ仕方ないとして、入場前にもらったパンフレット入りの紙袋をごそごそごそごそ(しかも2度3度ではない)音を立てたり、後半の演奏がすでに始まっているのに靴音を堂々と立てて遅れて入ってくるカップルとか、さらにアンコールがめちゃくちゃ(苦笑)。拍手が揃わずに、アンコール前に席を立つ人が多かったです。

クラシック鑑賞に慣れていない人が多かったのかなあ。私も慣れてはいませんが、音楽鑑賞が好きで来ているし、多少は周囲に合わせて行動しようという気持ちになれますが、そうでない人はつまらないかも。。昨晩は曲目も大衆的に知られてる有名どころの聴きやすい小品は少なかったですし。
しかもその有名どころは後半でした。私の隣の人は前半ほとんど寝ていて、後半は席に戻ってきませんでしたが、彼も招待か何かで来たのかなあ。うーむ。

一緒に行った友人とその友人はクラシックにとても詳しくて(友人の友人はヴァイオリンを弾くらしい)、コンサート後に3人でお茶をした時に演奏や楽器の音色、ホールの音響等々について2人で随分難しい話をしていました。
私はついていけず、黙って耳を傾けていました(笑)。
ピアノをやっていたと言ってももう十年以上前の話で、クラシック好きと言ってもただ聴くのが好きなだけだから、ちょっと小難しい話になるとさっぱりですね(苦笑)。
ああいう話を聞かされると、知識のないまま、ただ好みや感性に任せて聴くことが悪いような気にさえなってしまうけど、でも今の自分のその姿勢を意地でも貫きたくなってしまう頑固者の私です(笑)。

知識と言えば……

昨日はベートーヴェンの『クロイツェル・ソナタ』(ヴァイオリンソナタ第9番)の演奏がありました。
『クロイツェル・ソナタ』というと、トルストイの同名小説が有名です。私もかつて読んだことがあるのですが、曲は1度くらししか聴いたことがありませんでした。
トルストイの小説は、妻の浮気を疑って妻を殺した男性の告白、という物語なのですが、主人公の男が妻の浮気を疑うきっかけとなったのが、このベートーヴェンの『クロイツェル・ソナタ』なんです。
この曲はピアノとヴァイオリンによる演奏です。男は、自分が妻に紹介した男性ヴァイオリニストと妻が『クロイツェル・ソナタ』を競演するのを聴いて嫉妬するんです。

昨晩もヴァイオリニストは男性、ピアノは女性での演奏でした。以前聴いた時はラジオか何かだったので、そんなに感じませんでしたが、昨日2人が演奏をする様子を見て、小説の主人公が嫉妬してしまった理由がよくわかりました。トルストイが触発されたという理由も。
本当にこの曲は、甘美で情熱的でした。特に第1楽章。
演奏者もこの物語を知っているから(パンフレットにそう書いてあった)、おそらく少しは意識して弾いていたのではないかと勝手に思うのですが、時折ピアノに視線を送ったり、ピアノだけの時にその演奏に耳を傾けている姿なんていうのが、まさしく「ただの競演ではない2人」を感じさせるんです。
ヴァイオリンとピアノが語り合うような冒頭から、2人の間には何かがある、と感じずにはいられませんでした(実際は知りませんよ、もちろん、笑)。

「演奏」って何も音を奏でるだけではないんですね。
先日、クラシックの演奏会を聴く上でのマナーが書かれたサイトを偶然発見し、読んでいたら、「演奏会では目を閉じて音に集中している方もいますが、できるだけ目を開けて演奏する姿を見てほしいです」といったことが書かれていました。
実は私も目を閉じて聴くタイプなんですが(目を開けていると集中できなくなってしまうんです。家で聴く時などはいつも閉じているので、慣れなくて)、昨晩の演奏を見て「なるほど、そういうことか!」とこの記述に納得できました。
音色だけでは表現できないものもあるのですね。

……そういうわけで、昨日はトルストイの『クロイツェル・ソナタ』を知っていたおかげで新しい発見ができたので、知識も疎かにしてはいけないなと思うのですが、なんだか、うーん。
知識に頼りすぎると音楽の本質を見失ってしまうのではないかと私は考えているのですが、私のように好みや感性に頼りすぎるのもあまり良くないかもしれない(汗)。

2 comments to “『クロイツェル・ソナタ』の話”
  1. いろいろ聴いているけど、客席の騒がしさに聴いていて頭に来ることもしょっちゅうですね・・・九響の定期でもこの前は緊張感あって静かだったけど、パンフレットをあせる音やひそひそ話や飴の包みを開ける音は毎回ですね。去年7月の定期では演奏中に靴音を響かせて帰っていった人もいたし、ひどいものです・・・
    以前に合唱をやってて、実際に舞台で歌ったこともあるけど、舞台から客席はよく見えてて、ああいうマナー悪いのも筒抜けなんだけど、本当に不思議です・・・
    音楽を聴く上で、僕ら素人にとってはどの辺まで曲についての知識とか逸話とか標題についてとか知っておくべきか、難しいですね。ただしここだけの話(笑)、作曲家や音楽に関する逸話には眉唾物の話も多いので、あまりこだわらなくてもいいみたいです(笑)。

  2. >Masahikoさん
    そうなんですか。定期演奏会は常連さんが多くてマナーもしっかりしてそうなイメージなのですが、そうでもないんですね(>_<) 実は私も昨日別のコンサートを聴きに行った際、寝不足がたたって前半うとうとしてしまったんです。演奏者から絶対見えてるよなあと思いながら、眠気を抑えられませんでした。とても申し訳なかったです。。 演奏会の前日はきちんと寝て、体調も整えないとダメですね(^^;。 知識はほどほどに、ですね(笑)。 音楽は基本的に楽しむものだと私は思っているので、それを一番心がけながら音楽と楽しく付き合っていきたいです。

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