バンクーバー五輪 フィギュアスケート・男子シングル(海外選手編)

ちょっと日本選手編から少し日があいてしまいました。気合いを入れて、男子シングル、海外選手たちの感想を。

まずは金メダルのエヴァン・ライサチェック(米国)。
SPで素晴らしい演技を見せ、「あ、これは優勝するかもしれない」と思ったら本当に優勝してしまいました。
2位のプルシェンコとの間に4回転の有無について論争が巻き起こっています。私も一番フィギュアに夢中になっていた時期が4回転時代(4回転跳ばなきゃ話にならないという恐ろしい時代)だったので、男子シングルでしか見られない、男子最大の魅力の一つである4回転を跳ばずに金メダルがとれてしまう現状は大変寂しいです。
いろいろ思うことはあるけれど、まとまらないのでここでやめておきます。
とりあえず、ライサチェックおめでとう! 数年前にはライサチェックが金メダルとるなんて考えてもみなかったよ!
SPの勢いは本当に良かったです。おめでとう。

2位はエフゲニー・プルシェンコ(ロシア)。
今季の復帰試合ではブランクを感じさせない凄さを感じたものの、今大会はもう体がボロボロなんだと強く感じる大会となってしまいました(トリノでもちらっと感じたかも)。
特にFSは痛々しくて見ていられなかったです。それでも転倒せずに演技を終えられるプルシェンコだから、もうやっぱり凄いとしかいいようがないのですが。。
SP、FSどちらもいまいちなプログラムでしたが、個人的にはFSの『タンゴ・アモーレ』好きです。曲はプルシェンコと懇意にしているエドウィン・マートンの作曲ですが、他の選手にも滑ってほしいなあなんて思いました。
サーキュラーステップは本当にびっくりするほどスピードがなかったですが(わざとやってのけるところがまた何とも……)、ノロノロステップは苦手な私でもあのステップに魅力を感じてしまうのは、やっぱりプルシェンコだからなんでしょうね。
SPのほうでは速いというか豪快なプルシェンコステップをやっていましたが、『アランフェス協奏曲』のあの編曲とあの振り付けはさすがにちょっと……(苦笑)。もうちょっと何とかならなかったのかなあと、ちょっぴり残念でした。

今回の復帰は4回転のことはもちろん、フィギュア王国ロシアの低迷などいろいろなことがあってのことだろうと思います。ボロボロなプルシェンコを見るのは正直辛かったけど、でもプルシェンコの姿を見ることができてやっぱり嬉しかったかな。
1998年のNHK杯で初めてプルシェンコを見た時は本当に衝撃を受けました。初見であれほど衝撃を受けた選手はプルシェンコ以来いません(毎年真剣に見てるわけではないので)。凄い才能の持ち主だと改めて思う次第です。
ソチ五輪も出場すると発言しているみたいですが、あまり無理しないで欲しい。ただでさえ怪我で体ボロボロなのに、30歳超えのソチはもうどうなるんだよ!!
それまでに良い選手が育てばいいのですが、どうなるんだろう、ロシア……。
言いたいことを言うためにバッシングも承知で戻ってきてくれたんですね。ありがとう、プルシェンコ。

4位も復帰組、スイスのステファン・ランビエール。
SPの『ウィリアム・テル』は効果的な音楽の使い方で、さすが見せ方がうまいなあと思いました。FSの『椿姫』も期待していたのですが、調子が悪かったのかイマイチな出来。かつての濃いランビエールの演技が見られず残念でした。
演技後のインタビューではジャンプにエネルギーを使いすぎたという話をしていたそうです。
メダル候補のベテラン勢に切なさも感じた今大会でした。

……と、その筆頭はフランスのブライアン・ジュベールですね。。
金メダル最有力候補の一人でしたが、今季はなかなか調子が上がっておらず大丈夫なのかと思っていたら、SPで痛恨の転倒。。
SPはまさかの18位発進、FSでの挽回もならずに最終順位は16位でした。
FSの『Ancient Land』は良いプログラムでした。五輪にふさわしいプログラムなのに、と涙ながらに見ました。本当に残念というか無念というか……。何が起こるかわからないのが五輪。

6位にはジョニー・ウィアー(米国)が入りました。
女子選手よりも美しさと色気で魅せることを知っているジョニー! SPの『I LOVE YOU,I HATE YOU』は黒にピンクの衣装で色気を、FSは『堕天使』でしっとりと美しく魅せてくれました。
FSは直前に滑った大ちゃんのメダルの行方が気になり、きちんと演技を見ることができなかったので(笑)もう一度きちんと見たいところ。彼も演技後に満足した表情をしていて、嬉しかったです。
なかなか点が伸びずに最終順位は6位となりましたが、何よりも本人が満足しているかどうかというのが、実は感動するかどうかの大きなポイントだったりするんですよね。
ジョニー、入賞おめでとう!

アメリカ代表最後の一人、全米王者のジェレミー・アボットは9位。
今季惚れた選手の中で一番応援していたのですが、SPはミスが続いて15位。メダル争いに絡んでくるだろうと思っていたのでショックでした。
SPはビートルズの『A Day In the Life』。気だるさを漂わせながらもかっこいい、大好きなプログラムだったのですが、今回はその気だるさが弱々しさに見えてしまいました。。
一日あけてどれほど取り戻してくるかと不安だったFS。
サン=サーンス『交響曲第3番』に乗せて滑る壮大で力強いプログラムは完璧とは言えなかったものの、序盤のミスを引きずらずに盛り返して滑りきってくれました。
年齢的には最初で最後となるだろう五輪。もっと上の成績を収めてほしかったですが、最後は納得した表情を見せてくれたのでホッとしました。
コーチの佐藤有香さんもコーチとして初めての五輪。キスクラでは少し緊張していたようにも見えました。名コーチへの第一歩として、今回の五輪が良い経験になればと思います。
二人の今後に期待です。

上位はベテラン勢が占めましたが、今大会はソチ五輪でメダル争いをすることになりそうな若い選手たちの活躍も目立ちました。8位に入った日本の小塚くんは言わずもがな、5位にはカナダのパトリック・チャンが入賞していましたね。
そんな若手の中で特に目を引いた選手たちを何人か。

まずはカザフスタンのデニス・テン。
今季注目していた選手の一人です。SPでは『SING SING SING』に乗ってダンスの才能をこれでもかと見せつけてくれました。
期待していたFSはミスが見られ、というかプログラムがいまいちだったせいもあって(ここでも微妙な『アランフェス協奏曲』の編曲が……)、本人としても見ているこちらも満足できなかったのがやや残念。。SP10位から最終的に14位まで順位を落としていました。
しかし、まだ16歳!! 幼さを残す風貌ながらも眼差しはとても力強く、頼もしささえ感じさせます。
これからどう成長していくのか本当に楽しみな逸材です。

フランスのフローラン・アモディオも今大会楽しみにしていた一人。SPは滑走順が早く、地上波では放送が見られませんでした(楽しみにしていたのに……)。とても良い演技だったようで、SPは11位発進。
FSは映画『アメリ』の音楽に乗った不思議なプログラム。彼もテンと同じく踊ることのできる選手で、リズミカルに滑っていました。
小さなミスがあり順位は15位で、最終順位12位。しかし演技終了後、本人は力を出せたといった表情でした(ような気がします)。
こちらは19歳。フランス国籍ですが出身はブラジル。彼にしか出せない雰囲気があるので、これからどんな演技が見られるのか楽しみです。

プルシェンコに続くロシアの二番手として出場したのは、アルチョム・ボロドゥリン。
うーむ、王子様系イケメンになるのかな(笑)。髪型は随分もっさりしてますが、正統派イケメンの20歳。
FSはタンゴでした。確か以前見た時はバラと棘がモチーフの衣装だったのですが(アニメ『ベルサイユのばら』のオープニングを思い出させる感じで好きだった)、変わっていました。あの衣装が見たかったので、ちょっと残念。。
演技はとても良かったです。もう少し力強さが欲しいかな、とも思いましたが、イケメンだから許します(笑)。
SP13位、FS12位で最終順位は13位でした。

スペインのハビエル・フェルナンデスはFS10位の大健闘。
FSの曲は『パイレーツ・オブ・カリビアン』でした。サーキュラーステップでは映画のジョニー・デップのように酔っ払った演技をしてのステップを披露。これがとても良かった!
この映画の曲はよく使用されますが、フェルナンデスのプログラムは凝っていて面白く、新鮮でした。
冒頭には4回転に挑戦し転倒してしまったのですが、その転倒も忘れさせるほどの良い演技で、観客も味方につけていました。
見た目は20歳超えているようにも見えるのですが、まだ18歳(スペインは18歳でお酒飲めるのかな、笑)。いやいや、楽しみです。
SPは16位だったようで、最終順位は14位でした。

15位はスウェーデンのアドリアン・シュルタイス。
若手と呼ぶには微妙な21歳。GPシリーズで見て気に入った選手の一人でとても楽しみにしていましたが、五輪は想像以上の活躍ぶり! 特にSP・FSともに4回転を入れるという男っぷりには驚きました。
不思議なプログラムは果たしてカナダの観客に受けるのかと心配もしたのですが、FSは大きなミスのない演技で、見事に観客を魅了していました。
今から来季のプログラムが楽しみでなりません。

他にチェコのミハル・ブレジナも注目していたのですが、今大会ではいまいち印象に残りませんでした。次に期待です。

本来の力を出し切れなかった選手たちを思うと切なく、一方で若手の活躍に胸が高鳴った、複雑な思いの五輪となりました。五輪はいつも世代交代の境となるので、毎回切ないものになりますが……。
選手たちはそれぞれ満足や後悔やいろんな思いを抱えているだろうかと思いますが、見る側としては十分に楽しむことができました。選手の皆さん、お疲れさまでした。そして、ありがとう!!

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