映画『ハナミズキ』の試写会に行ってきました。
北海道を主舞台に、高校の時に出会って恋に落ちた男女の10年間を描いた青春物語。
宣伝では「本気の愛」とか「泣ける!」という文句が並んでいますが、2人の10年間、子供から大人へと成長していく過程を描いているので、あえて「青春」と言いたい。
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以下、雑にネタバレ。
大まかなストーリーは以下。
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海外で働くことを夢見て勉強に励む主人公・平沢紗枝(新垣結衣)は、幼い頃に父親をなくし、北海道で母親(薬師丸ひろ子)と二人で暮らしいる。
東京の大学への進学を目指し受験勉強に励むある日、紗枝は漁師を目指して水産高校に通う木内康平(生田斗真)と出会い、恋に落ちる。
康平の応援もあって無事に志望校に合格した紗枝は上京し、北海道に残る康平との遠距離恋愛が始まる。
しかし、東京で華やかな学生生活を送る紗枝と故郷で漁師を続ける康平はいつしかすれ違っていく。そして紗枝の前に、同じ夢を持つ大学の先輩・北見(向井理)が現れて……。
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ストーリーはありきたりというか、「先輩とあーだこーだあって、最後には結局二人が結ばれるんでしょ!」なんて思ってしまうのですが……まあ、実際そんな感じではあるのですが(笑)、出会ってからの10年間を描いているだけあって、ただの恋愛映画で終わっていません。
冒頭に書いたように、どちらかというと青春映画。10年という短くて長い月日を丁寧に(「詳細に」という意味ではない)描いていたように思います。それも主人公二人だけでなく、彼らの友人や家族の分まで。
この映画のいいところは、10年かけてそれぞれの登場人物たちが自分たちの幸せを見つけていくこと。
皆が幸せになったというわけではないですが、10年という時の流れの中で、夢を叶えたり、結婚をして家庭を持ったり、新しい人生を見つけたり……。それぞれが確かに「10年」という時間を生きている、生きてきた、という背景が見えるんです。
特に主人公たちの10年間は、見ていて胸に迫るものがありました。
18歳~28歳までの10年。主人公たちの10年間は、私の直近の10年間でもあるんです。
大学受験、学生生活、就職活動(私はほとんどしてないけど)、就職。
別れ、新しい出会い、再会、別れ、再会……。
10年ってこんなに長かったんだと、彼らの10年を見て思いました。
新垣結衣さん演じる主人公の紗枝は、北海道の緑美しい田舎町から(なぜか)早稲田大学に進学します(ちなみに第2志望は上智だった)。
高校生として出てきたガッキーは、「え、ガッキーってもっと可愛かったはずだけど」と思うくらい芋っぽいのですが、東京で学生生活をし始めてから垢抜けていきます。
田舎の女子高生が上京。新しい友人、新しい大切な人を見つけ、夢を叶え、ニューヨーカー(!)になるんですよ!
対する康平は、北海道で漁師生活。
漁師である父(演じるのは頑固親父が似合う松重豊さん)の跡を継ぐのですが、父は借金を背負い、家計は火の車です。そんな中、父は無理が祟って急死します。
このことをきっかけに、康平は遠距離恋愛をしていた紗枝と別れます。
その後、彼のことをずっと思っていた幼馴染のリツ子(蓮佛美沙子さん←いかにも「田舎の女です」って雰囲気が出てる!)と酔った勢いで付き合い始め、結婚します。
たとえ別れても二人の人生はそこで止まることはなく、前に進み続けているんですね。お互いに新しいパートナーを得て、新しい人生を歩んでいる。
ずっとお互いを思い続けている、なんてことはなくて、確実に「相手がいない」時間があったということ。その間どちらもそれなりの幸せをつかんでいた、ということがわかるんです。
この辺りは結構リアルだなあ、と思いました。いい意味で裏切られたというか、10年間ねちっこく互いを思い続けるストーリーなのかと思っていたので(笑)。
それぞれにそれぞれの人生があって、二人の人生は重なり合うこともあるけれど、互いに知らない部分のほうがずっと多いんだということがきちんと描かれていました。それが、この作品に好感を持てた一番の理由です。
二人がすれ違う部分も、北海道の田舎で生きる康平の厳しい生活も、ありふれたエピソードではありますが、そこがリアルに感じられる部分でもありました。
二人の偶然の再会は映画だからこそのエピソードではあるけど(特に終盤)、生き方そのものはいたって普通で親しみを感じられます。映画っぽくないというか。
二人だけでなく、周囲の人々も普通の人なんですよね。普通すぎるくらい、すごく平凡で。
……なので、そこまで感動しません(笑)。
宣伝文句にあるほど二人の恋愛では泣けません(少なくとも私は)。
私が一番泣けたのは、紗枝が上京する日の場面です。故郷を離れるときの寂しさは、恋愛の別れとは別物。思い出さずにはいられませんでした。
コメディ要素も結構あります。特に高校時代は「ザ・青春」で楽しく見られます。
そんな彼らが様々な経験を経て大人になっていくんですね。お笑い担当のタモツ(康平の友人)が最後はパパになっていた時には、さすがに寂しさを覚えました。
一緒に映画を見た友人(アラフォー男)は「10年かける必要あったの?」とご不満のようでしたが、私は逆に10年だったからこそ感じられたものがありました。これは年齢のせいかな。
私と同世代の方は何かしら感じる部分があるかもしれない、と思っているのですが……。
ちなみに、時代設定は1996年~2006年(or95~05←記憶曖昧)です。高校の頃にはまだケータイがなくて、固定電話で電話していたりします。
ケータイが当たり前の世代が見たら少し戸惑うかな? 私も二人が固定で話しているのを見て、「あれ、ケータイは?」と一瞬考えてしまいました。
ケータイが普及したのは私が高校2~3年の頃だったから、実年齢は4つ上の主人公たちの頃にはまだないんですよね。
つい最近のようで、遠く感じる10年。
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とまあ、こんな感じです。
毎度まとまりのない感想で申し訳ないです(汗)。
気軽に楽しめる映画です。みんな(康平の家族は苦労続きですが)が幸せに向かっていくし、悪い人も出てこないので気持ちよく見られます。
……おっと! 一番大切なことを忘れていました。
生田斗真ファンは必見です(あえて言う!)。
方言の中でも特に「~だべ」「なして?」を多用し、田舎のイケメン漁師を見事に演じていました(細かい訛りはわからないのであしからず)。
色白で浜に立っていたときは「いくら北海道とはいえ色白の漁師はいないだろ!」と突っ込んでしまいましたが、中盤からはきちんと日焼けしてたくましい男になっています(色白はスタッフのミスかなあ)。
ラブシーンはもう、あわわわわ……ぐふっ、という感じです。にやけないように要注意です(私だけ?)。
あと、紗枝の先輩・北見を演じる向井理さんも素敵です!
登場シーンから心を鷲掴みにされます。生田くん(康平)とはまた違う魅力。
紗枝が羨ましくて仕方ないです、はい。
都会に出て美しくなっていく紗枝を演じるガッキーもいいです。落ち着いた女性を演じています。
それと、紗枝の母親役を演じていた薬師丸ひろ子さん。
母子家庭である二人の関係は、新しい親子像のような気がしました。
父親の思い出がほとんどないこともあるでしょうが、母の恋愛を素直に受け入れる紗枝の姿は新鮮でした。母も娘の恋愛に必要以上に口を出しませんしね。
こんな関係が有りうるのかと思うのですが、でも、あってもいいと思います。
試写会のほうは一般人の純愛エピソードを披露されたり、主題歌の「ハナミズキ」を合唱させられたり(←マジ)と戸惑い尽くしでしたが、作品のほうはそんなことはないのでご安心を!