2012年2月に鑑賞した映画の感想です。
鑑賞したのは以下の作品。
『マイウェイ 12000キロの真実』
『サラの鍵』
『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』
『痛み』
『人生はビギナーズ』
それでは、感想。鑑賞順です。ネタバレあります。
( )内は個人的な満足度。★5で満点。
※は鑑賞日と鑑賞劇場。
『マイウェイ 12000キロの真実』 (★★★★)
(2011年/韓国)
第2次世界大戦で、日本・ドイツ・ソ連と3ヶ国の軍服を着て生き抜いた、ある東洋人の話。
オダギリ・ジョーとチャン・ドンゴンという日韓の人気俳優の共演が話題になった作品ですが、彼ら二人に限らず、日韓の俳優陣の演技がとても見応えのある作品でした。
戦争映画を見るといつも痛感するのは、自分の知識不足、で、そのたびに「ああ、勉強しなきゃ」と思いながら勉強しない自分がまた情けないというか、まあ、そんな愚痴はさておき、私はこの作品、好きです。
一番はやはり、スケールの大きさ。アジアからヨーロッパまでを舞台とし、その中で戦争に翻弄されて生きる人々の、生への執念に圧倒されました。話自体は、ノルマンディ以降尻すぼみな感じもしましたが。
オダギリ・ジョー、とても良かったです。特に前半は何かにとり憑かれたようで。この役はしんどかっただろうな、と余計な事を考えながら見てました。
主人公の2人。オダギリ・ジョー演じる辰雄とチャン・ドンゴン演じるジュンシクは、対照的な2人でした。ジュンシクは最後まで変わらぬ信念を持っていたけど、辰雄は何かに依存してなきゃ生きていけない人。それが大佐時代は「皇軍」で、最後はジュンシクとの友情に。
彼らの友情はほんとに“友情”と言えるのか、ちょっと納得いかないんですけどね。展開も、無理やりこじつけたような感じでしたし。ただ、辰雄の依存症的な一面を考えると、ああいう展開もありなのかとなんとか納得できました。なんとか。さすがにラストのマラソンは「ええっ?!」って感じでしたが。
とにかく、スケールの大きさと、日韓俳優陣の演技合戦が大きな見所。十分楽しめる作品でした。
(2月3日、ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13)
『サラの鍵』(★★)
(2010年/フランス)
第2次世界大戦時にフランス・パリで起きたユダヤ人迫害と、事件を取材する現代に生きるジャーナリスト。迫害されたユダヤ人少女「サラ」が辿った過酷な運命と、現代女性ジュリアの生き様が描かれるんですが・・・。
ジュリアにどうしても好感が持てず、最後までモヤモヤが残りました。サラの運命に対して、ジュリアの悩みが小さく(実際は全然小さくないですよ)思えてしまうんですよね。比べること自体がおかしいのですが、サラの悲劇の後に、ジュリアがおしゃれなレストランで夫と乾杯してる場面が出てくると、冷めちゃって・・・。ジュリアの人生を否定するわけではないし、むしろ彼女だけの物語だったら、違う感想を持っただろうな、と思うのですが。まあ、それじゃあ別の映画になってしまうんですが。
あと、ジュリアの行動。彼女はサラ一家の悲劇を知るため、彼女の関係者を探し始めます。最終的にサラの息子に会ったジュリアは、息子が知らなかった事実を告げることで、息子を傷つけてしまいます。その時の、息子の表情が、忘れられないんです。
私はそこまでずっと、この映画を謎解きのようにワクワクしながら見てたんですね。サラの息子がジュリアを拒絶したときに、ハッとしたんです。ああ、なんてことをしてしまったんだろうって、他人の人生に土足で踏み込むなんてって。別に私がしていたわけじゃないんですけど、他人の悲劇をワクワクしながら見ていたことに、ショックを受けたんです。フィクションだけど。
結局最後は、息子も事実を受け入れました。映画だから、このラストでいいんですけど、でも、本当にこれでいいの?って思わずにはいられなかったんです。乗り越えられない人だっているじゃないのって。息子が受け入れられなかったら、どうしてたのよって。
最初からジュリアに共感できなかったから、こんな感想を持ってしまったんだと思います。
もっと、サラの人生を見たかったです。
(2月3日、KBCシネマ)
『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』(★★★)
(2011年/アメリカ)
911テロで父親を失った少年が主人公が、哀しみと喪失を乗り越えていくまでが描かれています。
父と子の、そして母と子の物語だと思いました。サンドラ・ブロック演じる母の強さ。夫を失った悲しみと向き合いながら、母として息子のためにできることをやっていく。
強すぎる父と息子の絆に対して、母親の存在が薄いことにずっと不安だったんですが、終盤にすべてが明かされます。母親の行動には賛否あるようなのですが、私はあれでよかったと思いました。父には父の、母には母の、それぞれの愛し方があると思うんですよね。
父と子の関係、母と子の関係、そして父と母の関係。
それぞれの関係性は違っても、三人はきちんと繋がっている。父と子が親友のような関係でいられたのも、二人を温かく見守る母がいたから。「家族」とはこういうものなのかと思いました。
しかし、傷ついて傷つけて傷つけ合って。見ていて辛い作品でした。
特にやり場のない悲しみと苦しさを母と子がぶつけ合うシーンは涙なしには見られませんでした。“最悪の日”の回想シーンも。何がおきたのかわからないまま、愛する人の命が奪われていくのを遠くから眺めている。そんなシーンが何度も出てくるんですよね。
理屈では説明できない、理不尽な別離というのは、本当に残酷。父の死と向き合おうともがく少年の姿はとても痛々しかったです。でも彼は涙を流し、感情を吐き出し、そしてそれを受けとめてくれる人がいました。「よかった」って、「本当によかった」って思いました。
ただ、私の読解力不足のせいでわからない点がいくつもあったんですよね。。。タイトルの意味も、正直何を指してるのかわかりかねました。そういう意味で、この映画を完全に堪能したという満足感がなくて、消化不良気味ではありました。
演技は、主人公のオスカー少年も間借り人のおじいちゃんも素晴らしかったけど、母親を演じたサンドラ・ブロックが一番好きかも。演技が云々というより、この女優さんが好きなだけですけど(^^;
(試写会。2月13日、都久志会館)
『痛み』(★)
(2011年/韓国)
痛みを感じない病気(無痛症)で、自分の体を痛めつけることで生計を立てて(投げやりに生きている)男性と、難病に犯されながらも路上でアクセサリー販売をしながら懸命に生きる女性のラブストーリー。
クォン・サンウ好きなので(ちょっとだけ)、見に行ったんですけど、なんだかねえ。エンタメとして見ても、どうしても楽しめませんでした。ラスト、死ぬのが男じゃなくて女だったら・・・と思いました。
しかも、こういう作品をなぜ(ミニシアター系劇場の)KBCシネマがやるの?っていう疑問が・・・。何かあるんでしょうか。
(2月18日、KBCシネマ)
『人生はビギナーズ』(★★★★)
(2010年/アメリカ)
チラシを見てコメディかと思っていたら…!(主人公の言葉を借りて)人生の悲しみと喜びを味わう、そんな作品でした。好きです。
こういうのを「共感」と言うんだろうなあ、と思いながら見てました。30半ばを過ぎて、悲しみと不安を抱えて生きる主人公オリヴァー(ユアン・マクレガーいい!)や、特にアナの言動には胸が締め付けられて、自然と涙がこぼれました。
アナがオリヴァーに「一緒に暮らそう」と言われたときに見せた戸惑いの表情や、自分の為に空にされた引き出しを見たときの涙。不安というのか、あの感情って、何て言えばいいんだろう。恋のその先に踏み出せない二人の姿に、自分を重ねてしまいました。
父親を失った悲しみから抜け出せないオリヴァーについては、親しい人を亡くした経験のない私にはわかりかねる部分もありました。ただ彼が、仕事で求められていないことに必死になっている姿というのは、なんだかわかる気がしました。それで彼は信頼を失ってしまったけど、あの過程は、彼がこれから先の長い人生を生きていくためにも必要だったと思うんです。彼が自分の悲しみと向き合う過程をアートで表現していたのはいいなあ、と思いました。
今の私はアナに共感したけれど、見る人によって、またタイミングによって、琴線に触れる部分は違うんじゃないかと思います。「また見たい」と思わせてくれる作品でした。
(2月18日、ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13)
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以上、2月に見た作品の感想でした。
3月はまだ2本しか見てません・・・とほほ。