アジアフォーカス・福岡国際映画祭2012

だーいぶ遅くなってしまいましたが(ははは、汗)、今年のアジアフォーカスの感想をざっとまとめます。

今年のアジアフォーカスは9月14日から23日までの開催でした(映画祭公式サイト)。今年も会場はT・ジョイ博多です。
一昨年、昨年は協賛企画のほうにも参加したのですが、今年は映画祭のみで、計16本の作品を鑑賞しました。
昨年と比べると鑑賞本数は倍で(昨年は8本)、とても充実した映画祭となりました。

ではでは、かるーく感想を。

※  ※  ※

今年の目玉は『別離』でアカデミー賞外国語映画賞を受賞したアスガー・ファルハディ監督の全作上映(5本)でしょうか。『別離』は昨年この映画祭で見ていたのでパスし、残り4作品を鑑賞。やっと、『浜辺に消えた彼女』も鑑賞できました。
というわけで、まずはファルハディ監督作品から。
★は個人的な満足度です。5個で満点。

『彼女が消えた浜辺』(★★★)
英題:About Elly
原題:Darbareye Elly
2009年/イラン/116分
仲良しグループの旅行に飛び入りで参加することになった「エリ」。彼女を誘ったセピデー以外は、彼女のことをよく知らない。そんな彼女が突然行方不明になり・・・。
エリが行方不明になり、彼女の事実が明らかになっていくのですが、見ていて思ったのは、人って赤の他人の人生には基本無関心なんだなあと。エリのことを知るセピデーだけが最後まで心を痛めていて、残りはどうやって自分に非がないことを証明するかに必死。見終わった後寂しくなる作品でした。。

『火祭り』(★★★)
英題:Fireworks Wendesday
原題:Chahar Shanbeh Souri
2006年/イラン/104分
結婚間近の若い女性が日雇い家政婦で訪れた家庭は、夫婦喧嘩で修羅場。その日一日、彼女は夫婦・男女関係の複雑さを目の当たりにすることに・・・。
「夫が隣の女と浮気してる!」という奥さんの被害妄想という結末で終わるのかと思ったら違って。最後まで面白く見れました。
何とも面倒な男女のいざこざでしたけど、結婚間近の若い2人が最後も笑顔を見せてくれたのが救い。若い2人に幸あれ!
それにしても、街中で爆竹を鳴らす「火祭り」の迫力にびっくり。火事にならないのかな。

『美しい都市(まち)』(★★★★)
英題:Beautiful City
原題:Shahr-e Ziba
2004年/イラン/102分
殺人を犯し死刑判決を受けた友人を救おうとする少年アーラ。少年院から出てきた彼は、友人の姉フィルゼーとともに、少年が殺害した被害者の父親に死刑を取り下げてもらえるよう、奔走する。そして、ともに過ごす時間が増えていくアーラとフィルゼーの間に恋が芽生えるが・・・。
状況が変われば人の思いも変わる。わかっているけれど、最後はやるせなさが残りました。
障害を持つ自分の娘とアーラとの結婚を条件に死刑を取り下げる、と言い出す被害者の義母。アーラが自分の娘に求婚しにきたと勘違いした義母の、いやしい笑みが忘れられません。
誰だって自分の幸せや利益が一番で、それは仕方のないことなんだけど。ショックでした、あの笑みは。
人間の善も悪も、さまざまな顔が見える作品です。。

『砂塵にさまよう』(?)
英題:Dancing in the Dust
原題:Raghs Dar Ghobar
2003年/イラン/95分
寝ちゃいました、すみません。。

ファルハディ作品は『美しい都市(まち)』が一番好きかな。
『彼女が消えた浜辺』や『火祭り』は割と裕福な層の人たちが主役で、乗ってる車はプジョーが目立ちましたね。『火祭り』の主人公夫婦が住むマンションの駐車場は2、3台並んでいたような。イランではプジョーが人気なのかな。。

続いて、その他の作品。

『さかなの寓話』(★★★★)
英題:Fable of the Fish
原題:Isda
2011年/フィリピン/85分
マニラでゴミ漁りをして暮らす夫婦。長年子供に恵まれなかった2人に子供ができるが、嵐の夜、妻が生んだのは魚だった・・・。
魚を人間の子供のように育てる妻。教会で洗礼を受けさせようとしたり、水槽に入れた魚をベビーカーにのせて水族館へ行く、といったシーンもあるんですね。シュールで思わず笑ってしまいそうになるんですけど、笑えないです。彼女は本気で魚を愛してる。
現実にはありえない話ですけど、この場所に自分がいたら・・・と考えずにはいられないです。答えはでないけど。
子供が生まれてからすれ違っていく夫婦関係に、胸が詰まりました。特に不器用な夫の愛が切なかったです。
お気に入りの作品です。

『カーハニー/物語』(★★★★)
英題:Kahaani
原題:Kahaani
2012年/インド/123分
コルカタを舞台にした良質のサスペンス。
コルカタの地下で起きた毒ガスによる無差別テロ事件から2年。1カ月前に着任以来、行方不明となった夫を捜しにコルカタへやって来た身重の妻は、地元警察と共に捜索を始める。手がかりがない中、夫に似た男が浮上するが・・・。
テンポのよいサスペンスで、最後まで楽しめました。インドではデリー、ムンバイに次ぐ3番目の人口を誇るコルカタの街をスタイリッシュな映像で見せ、街の魅力が伝わってきます。
そして、祭の最終日とともに迎える「カハーニー(物語)」のクライマックス。驚きのラストに最後まで興奮しっぱなしでした。
まあ、しかし一番の見所はヒロインでしょう。とにかく美しいっ!!(このお方) 彼女だけでも見る価値あります!(断言)
これは一般上映してほしいなあ。多くの人に見てほしい作品です。

『BOL~声をあげる~』(★★★★)
英題:Speak Up
原題:Bol
2011年/パキスタン/152分
死刑を目前に控えた女性が記者会見を願い出た。彼女は「殺人は犯したが、犯罪者ではない」と家族の悲劇の顛末を話し始める・・・。
女性や性的マイノリティといった、弱者である人々の生き辛さを描き、パキスタンに蔓延る古い価値観や因習を痛烈に批判した作品。それは過激に感じるくらいで、ヒロインの最後の問いかけには正直戸惑いました。
しかし、テーマの重さとは対象的にエンタメ色が強く、挿入歌にポップスが多用されていたり、パキスタンの様々な一面が見られます。パキスタンという国をよく知らない私には新鮮でした。
デートでプリクラ(向こうでは何と言うのかわらかないけど)を撮っていたり、私たちと変わらないデートをしているのにびっくり。いろいろと衝撃的です。
今年の観客賞受賞作。この作品も一般上映してほしい・・・。

『アモク』(★★★★)
英題:Amok
原題:Amok
2011年/フィリピン/82分
人と車で溢れる白昼のマニラで、偶然同じ場所にいあわせた人々に起きた悲劇を描いた作品です。
見ているこっちまでうんざりするような喧騒と暑さの中、「アモク(制御不能)」というタイトル通り、誰にも止められなくなった悲劇。一気にすべてが繋がる終盤は見応えたっぷりでした。

『ダンシング・クイーン』(★★★★)
英題:Dancing Queen
原題:댄싱퀸
2011年/韓国/124分
歌手になるのが夢だった妻と、流行らない弁護士の夫。しかし、偶然から妻は歌手としてのデビューが決まり、夫はソウル市長選挙に出馬することに。笑いあり涙ありの傑作エンタメ。
最終日最後の上映に行ったのですが、観客席はほぼ満席で、多くのお客さんと笑いと涙を共有でき、映画を見る楽しさをあらためて実感できました。韓流好きの母を誘って一緒に見たんですが、母も楽しんでくれて嬉しかったです。『サニー』もだけど、韓国の歌って踊るエンタメ映画、好きだなあ。
選挙の立候補者によるテレビ討論会では、日本でも見たことあるような論戦が繰り広げられ、思わず苦笑い。

『未来へつづく声』(★★★)
英題:Future Lasts Forever
原題:Gelecek Uzun Surer
2011年/トルコ/108分
論文執筆のため死者への哀歌を収集しにアナトリアへきた民族音楽研究者の目を通して、クルド人迫害の歴史に迫ります。
迫害された人々の無念さや哀しみ、すべてを包み込むかの地の風景やエレジーの美しさが胸を打ちました。重いテーマではありますが、政府からお金が出ているせいもあるのか、結構ライトな感じ。

『天龍一座がゆく』(★★★)
原題:龍飛鳳舞
2012年/台湾/110分
台湾オペラ(日本の大衆演劇っぽい)の一座が主役のコメディ。主演が実際のオペラスターということで、オペラシーンはめちゃくちゃかっこよかったです!旅芸人の苦労や内輪のゴタゴタなどをユーモアに描きつつ、オペラの魅力もしっかり伝わってきました。

『わが友ラシェド』(★★★)
英題:My Friend Rashed
原題:Amar Bondhu Rashed
2011年/バングラデシュ/100分
バングラデシュ独立戦争を、少年たちの目を通して描いた青春映画(?)。
自身も少年時代に運動に関わったという監督の思いが詰まった作品。ティーチインでも熱心に語られていたのが印象的でした。
技術的な面は正直・・・なのですが、それが逆にこの国の映画製作や鑑賞環境の状態をあらわしているようで。しかし、監督の思いは熱い!
建国40年というまだ若い国家のこうした作品を鑑賞できてよかったかな、と。

『やさしい女』(★★)
英題:With You, Without You
原題:Oba Nathuwa Oba Ekka
2012年/スリランカ/インド/90分
客としてきた美しい娘に恋をした質屋を営む中年男。やがて二人は結婚するが、二人には埋められない溝のような過酷な過去があった・・・。
悲しい愛の物語でした。相手がかつて敵対していた民族とわかった2人。夫が元軍人だったと知った時の妻の狼狽ぶりを見て、虐げられたほうの苦しみは癒えることなどないのだと。戦争は終わっても、悲劇は続く。
窓から見えるスリランカの茶畑や山々が美しかったです。

ここから先はちょっと・・・な作品。

『ミスターツリー』(★)
原題:Hello! 樹先生
2011年/中国/88分
主人公のトラウマをだらっと見せられた約1時間半。よく寝なかったなあと思う。。

『9月』(?)
英題:The September
原題:Eylul
2011年/トルコ/88分
台詞は少なく映像も単調で寝てしまいました。。

『バラナシへ』(?)
英題:From Seoul to Varanasi
原題:바라나시
2011年/韓国/98分
気持ちよく寝てしまいました。。最初のほうで、出版社社長の主人公が言っていた「本を読まない人の人生はコミカルだね」というセリフが妙に印象に残りました。(まあ、そのあと寝ちゃったんで・・・)

※  ※  ※

ちょっと時間が経ってしまっているので記憶も薄れているのですが、鑑賞後のツイートを元に思い出しながら書いてみました。
今年は『カハーニー』や『BOL』『アモク』『ダンシング・クイーン』など、一般上映してほしい!と思うエンタメ作品が印象に残りました。
韓国やインドの作品は日本でも上映される機会はありますけど、それでも少ないですし(特に福岡は地方だし・・・地方の中では恵まれているほうかもしれないけど)。各国で人気のある良質なエンタメ作品をもっと取り扱ってほしいなあ、なんて思いも抱いた今年のアジアフォーカスでした。
来年も楽しみです♪

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