最後のバレンタインデー

父親にあげた最後のバレンタインデーチョコの話。

※  ※  ※

先日2月14日はバレンタインデーでした。
晩に弟が彼女を我が家に連れてきて、2人で作ったというチョコレートを(母と私宛ての)置いていきました。デコレーションで母や私の名前が書いてあり、2人でわいわいと楽しく作った跡が見え、微笑ましく思いながら、こんな風にしてもらえるなんて、私は幸せ者だなあと思ったのでした。

そんなことがあったからか、ふと、もう何年も前のバレンタインデーを思い出しました。
福岡に来る前の、最後のバレンタインデー。今はほぼ絶縁状態にある父親への最後のチョコレート。

その頃はもう、我が家は家庭崩壊寸前で、毎日のように母も私も泣いている、といった感じでした。父親も(自分が原因とはいえ)、苦労からか髪の毛は真っ白。50歳になっているかいないか、という年だったけれど。
そんな時にバレンタインデーが近づいてきました。
私は毎年父や弟にチョコレートをあげていたので、あげることに。でも、この時は年中行事として、という思いはありませんでした。
私は何とかしてこの困難を乗り越えたいという思いがありました。父のことはこの時からではなく、もう何年も前から信頼していなかったし、憎んでいる面もあったけれど、それでももう一度家族として再生したい、という思いがあったんです。でもそれを面と向かって父に言う勇気はなく、チョコレートにその思いを添えることにしました。
そのチョコレートも直接渡すことはできず、机の上にそっと置きました。
もう顔を見て話すことさえできない状態で、でもそれでも、なんとか・・・と、すがりつきたい思いがあったんです。
たとえ直接言わなくても、間接的にでも、思いを伝えれば、父も変わってくれるかもしれない、と。

しかし、その思いは通じたのか通じなかったのか、すでに時遅し、だったのか、結局家族はバラバラになりました(バラバラといっても、父だけだけど)。
父がそのチョコレートを手に取ってくれたのかは、よくわからないままです。その後何も言われなかったですし。チョコレートは机の上に何日も置きっぱなしでした。
私は母に離婚をすすめました。母ははじめからそうするつもりだったのか、私に言われて決心がついたのかはわかりませんが、離婚したいと父に言いました(私の目の前で)。そして、私たちは逃げるように家を出ました。

それ以来、父とは会っていません(生きているらしいことは知ってる)。
こうやって離れたことを、後悔はしていません。たぶん、母もしていないと思います。
今不思議なくらい平穏な日々を送れているから、あの時決意してよかった、と思えるくらい。
ああなった原因が父だけにあったとは思わないですし、私自身にも悪い面があったとは思います。父を憎く思う気持ちも、あの頃と比べれば薄れてきています。「父を捨てた」という罪悪感に苛まれることもあります。
それでも、あの時決意してよかった、と思っています。

※  ※  ※

今までいろんなことで泣いてきたけど、そのどれもが、本当に私自身に起きたことだったのか、わからなくなってきます。本当は妄想で、それを事実と思い込んでいるんじゃないか、と。記憶が遠ければ遠いほど、そういう風に思ってしまう。
「最後のバレンタインデー」は、5年後、10年後、私の中でどんな思い出になっているんだろう。

そう、このことを思い出してしまったせいか、昨夜の夢に父が出てきました。気分のいい夢ではありませんでした。
こういう思いを、これからもずっと抱えながら生きていかなければいけないんですね。それはもう、仕方ない。仕方ないです。

もうすぐ春ですね。
福岡に来て、何度目の春になるのか。数えるのはやめました。

4 comments to “最後のバレンタインデー”
  1. お久しぶりです。家族の事では普通にしていてもいろいろ起こるけど、本当に大変な思いをしてきたのですね・・・
    実はこっちも今年に入って両親との事でいろいろあって気持ちが塞ぐことも会って、どこかに出かけてもどこか引っかかるものがあったりだったけど、この記事を読んで、改めていろいろ考えてます。
    いろいろ頭の中を巡って答えが出ないのは毎度のことですけど、そんな中で少しだけ、心が軽く感じた事も・・・春も近いし、難しい顔をして過ごすよりは一日でも笑って過ごしたいですね。

  2. >Masahikoさん
    こんばんは。
    本当に、家族っていろいろありますよね。
    Masahikoさんも今大変なんですね。。
    家族の問題はすぐに解決するようなものでもないので、お辛いかと思います。良い方向に向かうといいですね。
    もうすぐ3月ですが、寒い日が続いています。どうかご自愛ください。

  3. ご無沙汰してます。バレンタインデー、わが家は娘手作りのチョコケーキの味見で終わりました。いつかは父離れすると分かっていても寂しいですね。家族同士でも気が合う合わないがありますからね。私は父と余り気が合わないんですが、血がつながっているので仕方ないと思い気楽に付き合う様にしていますよ。能天気な性格が幸いしているようです。

  4. >miyupapaさん
    お久しぶりです。
    あら・・・味見だけですか?それは寂しいですね><
    父とは・・・私は気が合う・合わない以前の問題で、別れましたけど・・・。
    信じたいのに、何度も裏切られて信じられなくなる、というのは今までの人生でも特に辛い経験でした。
    何年も耐え続けた母の苦労を思うと、あらためて、母ってすごいなあと思います。

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