4年に一度の、冬のスポーツの祭典、冬季オリンピック。ロシア・ソチで行われた第22回冬季大会が閉幕しました。
毎回、フィギュアスケートを中心にTV観戦していますが、今年はフィギュア以外の競技も楽しみました。
思ったこと、感じたことを少し。
※ ※ ※
「少し」と言いつつ、長くなってしまいましたが。。
2月7日に開幕し、23日閉幕までの約2週間、熱い戦いが繰り広げられたソチ五輪。
メダルの目標数はいくつだとか、誰々が有力だとか騒がれる中、序盤は思うような結果がなかなか出なかった日本選手団。これは大会終了後はマスコミのバッシングが始まるぞ…と思っていたところに、今大会日本初のメダルを獲得したのが、スキー・スノーボード、男子ハーフパイプの若い青年2人でした。
スノーボードはどの種目もそうですが、スピード、高さ、技と、どれもがダイナミックで迫力があり、ルールがわからない素人目にもその凄さが一目でわかるスポーツですね。
いくつか見ましたが、どれも素直に楽しめました。
男子ハーフパイプは、予選から見ていましたが、メダルを獲得した平野歩夢選手も平岡卓選手も、素人目にも実力を感じさせる滑りでした。
決勝では、一人だけ1本・2本とも完璧に揃えた平野選手が銀メダル。1本目の失敗を取り返そうと、2本目、最後の最後まで攻めの滑りを見せた平岡選手が銅メダルでした。
メダルが決まって大喜びする1位のポドラドチコフ選手(スイス)の横で、そっと握手を交わし、静かに笑みをたたえる2人の姿はとても印象的でした。
そして、試合後のインタビューでも「緊張はしなかった。楽しかった」と、大喜びすることもなく落ち着いて、しかし満足そうな笑みを浮かべて語る2人に、新鮮で、不思議な感動を覚えました。
2人にとって五輪はすべてではなく、あくまでも通過点。2人がこの先に目指すものが何なのかはわかりませんが、確実に未来へと一歩一歩進む彼らの姿は、新鮮でした。今までにない感動がそこにあり、私の知らない「新しい時代」が来ているのだと、そんな風に思いました。
2人のメダル獲得後、何度となく彼らの決勝の滑りを見ましたが、その度に、静かで不思議な感動がよみがえります。
ルールについてあまり知らなくても楽しめるのが、速さを競う競技。
個人的に好きなのが、ショートトラックです。
小さなトラックで繰り広げられるスピードと駆け引きの勝負。どんな実力者でも、一瞬の隙ですべてが終わってしまうハラハラドキドキの展開は、見ていて楽しいです。
今大会では過去にいくつものメダルを獲得している韓国のアン・ヒョンス選手が、国籍をロシアに変え「ビクトル・アン」として、ロシアにショートトラック初の金メダルをもたらしました。
彼の国籍変更の経緯については詳しくは知りません。いろいろな噂がされているようですが、本当のところは彼以外には知る由もなく。ただ、国籍を変えてロシアに行ってからも、いろいろな苦悩があったであろうことは想像できます。
そんな彼に熱狂するロシアの観客に、私は小さな感動を覚えました。もちろんそれは、彼が母国ロシアにメダルをもたらしたから、というのが理由でしょうが、メダル獲得をロシア人スタッフと抱き合って喜び、「Спасибо(スパシーバ/ありがとう)」と書かれた国旗を背負ってリンクを一周するアン選手の姿を見た時に、国籍を超えたスポーツの力を見たような気がしました。
男子500m決勝。
メダル有力候補のアン選手はスタートで出遅れました。あっという間に終わる500mという距離。この中でどうやって挽回するのだろうと、ドキドキしながら見ていました。
しかし、最後尾からいっこうに上がってきません。メダルは無理か…?そんな思いがよぎった時、3位の選手がまさかの転倒でレースから離脱。その後、あっという間に1位に躍り出て見事金メダルを獲得したアン選手に、この競技の面白さと、彼の凄さを感じました。「強い」とは、こういう人のことを言うのかと。
本当に最初から最後まで何が起きるかわからない、見応えのある競技だと思います。
41歳のメダリスト、葛西紀明選手。
海外からも「レジェンド」と称賛される葛西選手のメダルには、ただただ喜びの感動と涙が溢れました。
メダル獲得を目標に戦い続けてきた葛西選手。個人では笑顔を、団体では涙を、カメラの前でも自然体で喜びを表現する彼の姿に、自然とこちらもつられて、笑って、そして泣きました。
心から五輪を、ジャンプを楽しむ姿。そして、きちんと結果を出す。ベテランならではの落ち着いた試合運びには、感嘆しかありません。
彼については、もう言葉は要らないですよね。本当にすごかった。
バンクーバー五輪から4年。この4年間、ただ、彼女の五輪金メダルが見たくて、見続けてきたようなものでした。
フィギュアスケート、女子シングル。
SPでまさかの16位スタートで、メダルは絶望的となった浅田真央選手。団体戦の頃から表情が硬く、調子は良くないのかなと感じていました。
FPは第2グループでの演技。彼女の実力からすればありえない滑走順。しかし、リンクに立った彼女は、SP時の表情とは明らかに違いました。
ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」。
ロシアが生んだ世界的に有名な作曲家。フィギュアスケートでも好まれて使われるこの調べにのって、浅田真央のソチ五輪最後の戦いが始まりました。
懸念されていたトリプルアクセルを完璧に決めると、難しいトリプル-トリプルの連続ジャンプも着氷。そして、彼女が「この構成で滑りたかった」という6種8トリプル(6種類の全トリプルジャンプを計8回跳ぶ)という、現在は彼女にしかできない、女子選手にとって最高難度のジャンプ構成のプログラムを、見事に滑りきってみせたのでした。
今でも思い出すと、涙が溢れてきます。
ただ楽しそうにジャンプを跳んでいた少女時代から、あっという間に世界のトップスケーターへと駆け上がり、さまざまなプレッシャーと戦い、そして悲しみを乗り越えてきた彼女。
SP失敗からのFP最高の演技という流れは、まるで彼女の歩みそのものでした。
メダルには届きませんでしたが、「この構成で滑りたかった」という彼女の目標は達成されました。
私たちは、選手がメダルを獲得したから感動するのではありません。目標を定め、それに向かって努力し、大舞台でその目標を達成し、喜ぶ選手の姿に感動をするんです。
「メダル」「メダル」と言うのは、多くの選手にとっての目標が「メダル」であるというだけ。メダルはトップアスリートの証でもありますから。
でも、スポーツはトップアスリートだけのものではありません。
私はスポーツ観戦が大好きです。
高みを目指してひたすら鍛錬を重ねる選手たちの技術と知識から生まれる戦いは面白く、あっと驚く迫力と、ハラハラドキドキの展開は、純粋に楽しめます。また、鍛え上げられた人間の肉体というのは美しく、芸術的でさえあるからです。
そして、ドラマがあります。
それは試合の中でもそうですし、選手一人一人のバックグラウンドでもあります。
五輪観戦の楽しみはもちろん、試合が一番ですが、私は開会式も好きです。
選手入場の際に、TVの実況がさまざまな国・地域の選手団に関するエピソードを披露しますが、そのエピソード一つ一つに、各選手が背負うさまざまなドラマが隠されています。それを聞いているだけで、私は涙がこぼれてしまうんですね(大げさですけどね、笑)。
すべての選手に、ドラマがあります。
そして、彼らを見ている私たちにも、ドラマはあります。
選手の姿を自分自身に重ねて応援することも、時にはあると思います。
選手の姿に元気や勇気をもらって、「よし、私もがんばろう!」と自分を奮い立たせることもあると思います。
人は感動なくしては生きていけません。
何気ない日常に良い刺激を与えてくれる、時には人生を変えるほどの影響も与えてくれる。生きる糧、だと私は思っています。だから「感動をありがとう」と言うんです。
今大会も多くの感動をもらいました。選手をはじめとしたすべての関係者に、感謝の気持ちでいっぱいです。
そして、不自由なくこの感動を得られる環境にいられるのは、私の周囲の人々のおかげでもあります。明け方まで一緒に観戦した母、私にスポーツの楽しさを教えてくれた母にも感謝したいです。
※ ※ ※
毎回フィギュアスケートを中心に観戦していますが、今大会はアイスダンスとペアの演技を見ることができませんでした。
思い入れの選手がいないと見れないということは、私のフィギュアへの思いもその程度だったということなのかな…。
その分、他の競技を楽しむことができたように思います。と言っても、時差の関係でTVの前に座っている時間は限られたので、見ていない競技の方が多いわけですが…。
開閉会式は、残念ながら開会式の方しか見られなかったのですが、ロシアの芸術・文化に対するプライドを感じさせる演出でした。個人的には、開会式で現在読書中のトルストイ『戦争と平和』のシーンが出てきたのが嬉しかったです。
閉会式は睡魔により撃沈したので、こちらでハイライトを見たのですが、シャガールが出てきたんですねえ。見たかった…。
音楽面でも著名な作曲家が多いので、これでもかと有名な曲が流れていました。閉会式ではラフマニノフの第2番が流れたとか。ハイライト動画ではチャイコフスキーも聞こえてきました。開会式ではショスタコーヴィチの「火の鳥」もありましたし、フィギュアスケートでもお馴染みの曲がいくつもありましたね。
次回の冬季大会は韓国の平昌で開催されます。どんな大会になるのでしょうか。
日本から近いですし、寝不足に苦しむことはなさそうです(笑)。楽しみです。