『ブルージャスミン』

セレブ女性が落ちぶれていく姿をシニカルに描いたウディ・アレン作品。

※  ※  ※

タイトルに惹かれて見に行きました。「ブルージャスミン」素敵な響きだと思いませんか?
しかし、タイトルから想像していた作品とは全く違いました。。

ストーリーは映画.comさんより。

上流階級から転落したヒロインが再起をかけて奮闘し、苦悩する姿を描いたドラマ。ニューヨークの資産家ハルと結婚し、セレブリティとして裕福な生活を送っていたジャスミンは、ハルとの結婚生活が破綻したことで地位も資産も全て失ってしまう。サンフランシスコで庶民的な生活を送る妹ジンジャーのもとに身を寄せたものの、不慣れな仕事や生活に神経を擦り減らせ、次第に精神が不安定になっていく。それでも再び華やかな世界へと返り咲こうと躍起になるジャスミンだったが……。

以下、ネタバレあり。

ヒロインのジャスミンを演じたケイト・ブランシェットが素晴らしかったです。
この演技で今年のアカデミー賞主演女優賞を受賞しているのですが、演技はもちろん、美しいお顔とスタイル、身のこなし。いやー、たまらないです! セレブファッションも、とにかく素敵。
プライドが高く、自分勝手で、とてもいい人とは言えず、さらに精神的に病んでいて言動も表情もおかしくなって落ちぶれるばかりなのに、それでも魅力的なんですね。もう彼女を見るための作品、と言いたいくらいでした。
彼女の出演作はほとんど見たことなかったのですが、こんなにいい女優さんだったとは…。

ストーリーは上記の引用通り。
ウディ・アレンの作品は初めて見たのですが、こういうシニカルな作風の方なんですかね(好き嫌いが分かれる、と言われているようですが…)。
ジャスミンの現在と過去を交互に見せることで、その落差を浮き彫りにするとともに、セレブ生活が破たんすることになった真実を暴く、という展開はうまいなあと思いました。テンポも良かったです。ヒロインが落ちぶれていくだけの話なのに、暗くもありません。
ただ、話が進むにつれて、ジャスミンの精神状態がかなり深刻であることがわかってきて、それでもテンポは変わらないままで、終盤はちょっとついていけなくなりました。ラストも個人的には不満でした(死なせてあげてほしかった)。全体的にデリカシーに欠けるというか、冷たいという印象です。
これは個人的な話ですが、家族にてんかん持ちがいる身としては、視線が定まらないジャスミンに対して、ジョークでてんかんが出されたことも少しショックでした(「そういうことを言う奴ら」ということだったんでしょうけど)。

作品から感じた「冷たさ」というのは、「嫌い」ではなく「無関心」に近い冷たさ。
あくまでも傍観者。わざとヒロインを突き放し、不幸にするのではなく、ヒロインが落ちぶれていくのをただ傍観している。そんな作り手の視線を感じました。感情を排しているというか。
ヒロインにも彼女の妹にも自分と似た点があり、すぐにでも感情移入してしまいそうな話だったのに、最後まで距離を置いて見ていられたのは、そういった作りだったからかなあ。
こういう話はいつもだったらすぐポロポロ泣いてしまうのに、最後まで冷静に見ていられたのは自分でもちょっと不思議でした。

一つ、これは凄いと思ったシーンがありました。
パソコン教室で知り合った女性に、あるパーティに招待されたジャスミン。そこで国務省で働いているという裕福な男性と出会い、彼に近付こうと、彼女は大きな嘘をつきます。
その嘘をつく場面。パーティ会場のバルコニーで、潮風を受けながら嘘をつく彼女を、カメラはアップで映すんですね。
カメラの捉え方とケイト・ブランシェットの演技は、ここが「ジャスミンの運命の分かれ目」という緊張感と、背筋がぞくっとするような恐怖がありました。
最後までそのシーンが脳裏に焼き付いて離れなくて。素晴らしかったです。

※  ※  ※

後味は悪いし、もやもやするシーンも少なくないし、好きになれない作品なんですが、かといって嫌いにもなれないんですねえ…。満足感のようなものもあります。ケイト・ブランシェットはもちろんですが、その他の俳優さんたちも良くて。
妙にクセになる、そんな作品でした。

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『ブルージャスミン』(英題:BLUE JASMINE)
2013年/アメリカ/1時間38分
監督・脚本: ウディ・アレン
出演:ケイト・ブランシェット、サリー・ホーキンス、アレック・ボールドウィン、ピーター・サースガード 他
※5月17日、KBCシネマにて鑑賞

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