アジアフォーカス・福岡国際映画祭2013(3)~東アジア・その他地域編

9月13日から23日にかけて行われた、第23回アジアフォーカス・福岡国際映画祭の感想です。
今回は東アジア・その他地域の作品です。※ネタバレあり。

※  ※  ※

( )内の★は個人的満足度。5点満点です。観客賞に投票した作品は、投票した点数を書いています。

『結界の男』(★★★★)
英題:Man on the Edge
制作年/制作国:2012年/韓国
監督:チョ・ジンギュ

突然霊媒能力を得たヤクザの戸惑いと活躍を描く、笑いあり・涙あり・アクションありの韓国エンタメ。
冒頭は緊迫感溢れるアクションで観客をひきつけ、序盤は笑いで思う存分楽しませ、最後は感動の涙で締める。
今回のアジアフォーカスは娯楽系の作品が多く見られましたが、バランスの良さ・完成度の高さでは、この作品が一番ではないかと思いました。私は最終上映を見に行きましたが、お客さんの反応もとても良かったです。
今年の福岡観客賞・熊本市賞(観客賞第2位)を受賞し、韓国の作品は昨年の『ダンシング・クイーン』に続き、2年連続の2位となりました。『ダンシング・クイーン』もそうですが、こうして安心して見られるエンタメ作品があるとやっぱり嬉しいです。
来年も韓国エンタメに期待!

『未熟な犯罪者』(★★★)
英題:Juvenile Offender
制作年/制作国:2012年/韓国
監督:カン・イグァン

盗みを繰り返し、少年院を行ったり来たりする少年の救いのない日々を描く社会派ドラマです。

主人公は中学生のジグ。両親はおらず、唯一の家族である病気の祖父の介護をしながら貧しく暮らしていますが、保護観察中に空き巣に入って捕まり、少年院送りとなります。その間に祖父が亡くなり、天涯孤独となったかに思えたジグでしたが、実母が生きていることがわかり、院を出た後、母親と暮らすことになりました。
この母親というのが、平気で嘘と盗みを繰り返し、他人にすがることでしか生きていけない、困った人。これでもかと繰り返される嘘と無心には、呆れたし、腹が立つばかりでした。
ただ、この母親はただの「未熟な大人」ではなく、障害を抱えているのではないかと思ったのですが、どうなんでしょうかね。そのあたりは全く描かれていなかったので、わかりません。
10代で家出し、行きずりの男との1回だけのセックスでジグを妊娠。親に勘当され、ジグを手放すことになり、これまで1人で生きてきた母親。彼女が頼るのは女性ばかりで、全く男っ気がないのも気になりました。男性関係でトラウマか何かあるのだろうと思います。美人で若くて、言動も(傍から見てる分には)可愛らしくて、何でこの人がこれまで1人で生きてこなければならなかったんだろうと。目には見えないのですが、抱えているものが重くて、見ているだけで苦しかったです。
その、母親が抱える「負」を、ジグも背負っているのが見えるんですね。盗み癖もそうですし、自分本位の性格や、先を見据えて行動できない無計画性など。
親から子へと続く負の連鎖。ラストシーンは希望が見えるような描き方になってはいましたが、私には明るい未来は全く見えませんでした。

ジグにはセロムという恋人がいましたが、ジグが少年院に入っている間にジグの子供を出産し、そのことで親に勘当され、シェルターで暮らしています。
10代少女の無計画な妊娠・出産。褒められたことではないかもしれませんが、それが即勘当へと繋がってしまうことに驚きました。社会に出ても右も左もわからない少女が家を出されて、まともに生きていくなんて簡単なことではありません。当然セロムも、バイトをしたりとがんばってはいますが、荒れた生活を送っています。
ジグはセロムを探し出し、再会しますが、当然ながら初めは拒絶されます。しかしセロムにも他に頼る人がいなくて、ヨリを戻します。ただ、ヨリを戻したところでうまくいくはずもなく・・・。

ジグ、母親、セロム。酷だけれど、彼らは一緒にいるべきではないと思いました。一緒にいるべきでない人々が依存し合うことで、更なる悲劇が起きてしまう。彼らに必要なのはきちんとした生活をサポートしてくれる第三者だと思うんですよね。母親ももっと若い時に支えてくれる人がいれば、違う人生を送れたのではないかと思います。

このような苦しい生活の中にも時に幸せな時間というのはあって、そういう場面では優しいメロディの音楽が使われていたんですが、それが余計に虚しさを増すばかりでちょっと気になりました。どういう意図で使っていたんでしょう。。
とにかく、最初から最後まで見ていて息苦しくなる作品でした。目を背けてはいけないのだけれど、見たくないという・・・。

『夢にかける女』(★★★)
英題:A Fallible Girl
制作年/制作国:2012年/イギリス・中国
監督:コンラッド・クラーク

ドバイで成功を夢見て、キノコ栽培農場を経営する中国人女性の日々を描いた作品。
出稼ぎの外国人で溢れるドバイの雑多な下町が舞台。高層ビルが連なるきらびやかなドバイの印象とはかけ離れており、映像も全体的に暗いのと粗いのとで、大都会の片隅で消えていく儚い夢を象徴しているようでした。

行動力はあるものの、ちょっと短期で気の強いヒロイン。オンボロアパートの狭い一室で中国人の友人と貧しく暮らしていますが、ドバイでの成功という夢を追いかけ、イケメンの彼氏もいて、一見充実した生活を送っているようにも見えます。しかし、一つうまくいかなくなると周囲に八つ当たりをしてしまい、すべての歯車が狂っていく。ただ、気を張り詰めていないと生きていけないんでしょうね。笑顔も涙も滅多に見せないヒロインの硬い表情がとても印象的でした。
ターニングポイントはいくつかあって、友人の言葉に素直に耳を傾けていればうまくいったかもしれないのに、とも思うのですが、でも、彼女を責める気にはなれないんですよね。

監督のコンラッド・クラークさんはイギリス人。映画祭のガイドブックによると、中国育ちとかいうわけではなく、学生時代に中国語と中国文化を学んだそう。非アジア人が描くアジアの一面。少々怠かったけど、ユニークな作品を見ることができてよかったです。

『狂舞派』(★★★)
英題:The Way We Dance
制作年/制作国:2013年/香港
監督:アダム・ウォン

ダンスに青春をかける女子大生が主人公のダンス映画。今年のアジアフォーカス福岡観客賞に選ばれた作品です。(観客賞:5点満点の観客投票で平均点が最も高かった作品)
とにかく圧巻のダンスパフォーマンスが見所。特に主人公たちのライバルチーム「ルーフ・トッパーズ」は序盤から魅せる魅せる!彼らのパフォーマンスはどれも素晴らしく、それだけでも見る価値があります。主人公たちがダンスに青春をかけているなら、ルーフ・トッパーズは人生をかけている、という感じ。彼らがいなかったら、中途半端な作品になっていたと思います。

そう、ダンスはとても素晴らしいんです。主人公たちのチームは大学のダンスサークルで、ルーフ・トッパーズと比べるとちょっと迫力にかけるんですが、ラストのダンス大会で見せた演技はユニークで面白かったです。
ただ、どうしても引っ掛かるのが、主人公ファーのキャラクター。相手をバカにして調子に乗っちゃうキャラは、どうしても好きになれなくて。特に同じサークル部員・レベッカへの過去の仕打ちはひどいものでした。

2人が中学生の頃、レベッカは民俗舞踊(?)を踊っていて、それを披露しにファーの学校を訪れます。ところが、ファーは全校生徒の前でレベッカの踊りをバカにして、彼女に恥をかかせます。この出来事をレベッカはずっと根に持っていて、大学で再会したファーにささやかな仕返しをしたりもするのですが、ファーは過去の自分の過ちを反省するそぶりも見せず、「まだ根に持ってんの?」なんてことを言います。
レベッカはその後自分を見失い、注目を浴びたいがために過激コスプレーヤーになるなど迷走し始めます。最終的に彼女は自分を取り戻しますが、下手したら悲惨な青春を送りかねませんでした。それを思うと、どうしてもファーの言動に納得できないんですね。正直、なぜこのエピソードを入れたのか疑問に思うほどです。
レベッカだけでなく、太極拳サークルのリョンに対しても、ファーは最初とても横柄な態度をとります。ファーは自分の信じるもの以外はバカにする癖があるようで。それは「若さゆえ」なのかもしれません。ただ、それを反省することもなく映画が終わってしまうのが、腑に落ちませんでした。他のキャラは皆成長しているのに、ファーだけそのままなんですもん。主人公がこれじゃあね、と。(変わってるのかもしれないですけど。私が気付かなかっただけで)
ダンスやその他のストーリーは文句なしなんです。それだけにファーの嫌なところが目に付いてしまいました。ここまでファーに嫌悪感を抱くのは私だけかもしれませんが。。。

『ゲーマー』(★★★)
英題:Gaamer
制作年/制作国:2011年/ウクライナ
監督:オレグ・センツォフ

PCゲームに情熱を注ぎ、その世界で生計を立てていく夢を抱く青年が主人公。世界大会で二位になるまで上り詰めますが、その後ゲームへの情熱を失い、人生に迷い始める苦悩の日々を描きます。
意味深な彼の笑みと共に、問題は解決しないまま突然終わってしまい、ちょっと消化不良でしたが、好きな作品です。

ゲームの能力はとても高いのですが、自信家で、ちょっととっつきにくくて友人もあまり多くない主人公。
学校にもまともに通わず、ゲームばかりに時間を費やし、本気でゲームの世界で生計を立てようと思っています。ところが、米国で行われた世界大会の決勝で負けたことから少しずつ将来の計画が狂い始めていきます。
スランプに陥り、所属していたクラブからは辞めるように言われ、何歳も年下の仲間に馬鹿にされるようになる。この年下の仲間が、かつての主人公の姿でもあるという皮肉。

ゲームの世界で生きていくことを諦め、親のサポートも得て学校も変え、新しい一歩を踏み出そうとしますが、それもうまくいきません。ゲームの世界でトップにいたというプライドが、ちょっと邪魔をしたりして。
新しい環境で友人を作ることができず、今までの友人たちとも、自分がゲームに夢中になっている間に距離ができていて、主人公は孤独を感じるようになっていきます。

情熱を失った時の喪失感・戸惑い。そして、その複雑な思いを誰にも相談できない孤独。
言葉にできない思いを抱えて夜の街を彷徨う彼の姿に、胸が締め付けられました。
恋に部活に一生懸命、友人たちと思いをぶつけあうのも青春だけど、孤独な葛藤もまた青春。自分と重なる部分もあり他人事とは思えず、胸が締め付けられました。

『No.10ブルース/さらばサイゴン』(★★★)
英題:Number10 Blues/Goodbye,Saigon
制作年/制作国:2012年/日本・ベトナム
監督:長田 紀生

1975年ベトナム戦争末期のサイゴンで撮られ、事情により昨年まで未公開となっていたという幻の日本映画。国立フィルムセンターに所蔵されていたネガと0号プリントを元に2012年にデジタル編集し、修復。今年ロッテルダム国際映画祭で正式招待作品として上映されたという作品です。日本での上映はアジアフォーカスが初めて。
舞台がベトナム戦争末期のサイゴンということで、反戦などがテーマの社会派作品なのかと思っていたらロードムービーで、思いの外楽しく見ることができました。この時代の映画はほとんど見ないので、演出や音楽などが新鮮で、それだけでも楽しめたという感じです。

主人公は、戦時下にありながらも人と活気で溢れるサイゴンの街で自由気ままに暮らす日本人駐在員の男。解雇した元従業員を誤って殺してしまい、そこから犯罪を重ね、現地の愛人や知人とベトナム脱出を試みるというストーリーです。
密航船によるベトナム脱出を計画し、サイゴンから(密航船の出る)フエまでを車やバイクで逃げていくロードムービーで、その間にアクションあり、ラブシーンありの完全に娯楽映画。戦時下でこんな娯楽映画が撮れちゃうんですね。びっくり。それがいいとか悪いとかは別にして、冒頭で「(戦争は)俺には関係ない」と言った主人公の本音が、全編を通して伝わってくるようでもありました。

主人公たちと一緒に逃げる「タロー」という青年がとてもいい味を出していました。彼は日本人駐在員と現地妻の間に生まれ、その日本人の父親に捨てられたという過去を持っています。「父親に会いに日本に行きたい」と言い、主人公たちについて行きますが、自分を捨てた父親と日本に対する憎しみを抱え、苦悩する姿が印象的でした。こういう子どもたちは、アジアのいろんな所にいるんでしょうね。
表題の「No.10」というのは、かつてアジアで「No.1」と呼ばれていた日本に対する皮肉となっています。

個人的に映画は新作を見ることが多く、過去の作品は見たとしても1980年代くらいのものからしか見てこなかったのですが、この作品を思いのほか楽しむことができて、80年代以前の過去の作品も見られるんじゃないかと思えるようになったのは良かったです。どうしても敷居が高いような気がして構えちゃうんですよね、何十年も前の作品って。。
もっといろんな年代の作品にも挑戦してみないと、ですね。

※  ※  ※

以上、今年のアジアフォーカス・福岡国際映画祭の感想でした。
書き終えるのに時間がかかってしまいましたが(汗)、なんとか鑑賞作品すべての感想を書き終えることができてホッ。

今年はエンタメ作品が目立ちました。中国・韓国・台湾に比べると、他のアジア諸国のエンタメ作品は見る機会がなかなかないので、各国で大ヒットした作品を見られるのは嬉しいですし、楽しいです。そればかりになるのはあれだけど、来年もいろんな国の良質なエンタメ作品を見てみたいです。
ただ、観客賞をそういった作品が持っていくとは思っていなかったです。これまでは社会的・政治的な問題を描いた作品が受賞していましたし。。1位も2位も、完全なエンタメですからね。びっくりです。
ただ、昨年と比べると強烈なインパクトを残す作品は少なかったような気もしますし、『狂舞派』がダンスパフォーマンスの勢いそのままに持っていっちゃったのも仕方ないのかなあ。個人的には『聖なる踊子』に期待していたのですが。うーん、残念。

今年は映画鑑賞の機会がぐんと減っていて、アジアフォーカスまでに14本(アジアフォーカスで鑑賞した本数より少ない・・・)、アジアフォーカス以後0本と、例年に比べると全然映画を見ていません。アジアフォーカスも始まるまでなかなか気持ちを上げられずにいました。
ですが、いざ始まって映画館に足を運ぶと、やっぱり楽しくて、映画祭が開催された2週間は本当に楽しく過ごせました。私の映画ライフはもうアジアフォーカスを中心にまわりつつあるかも。(今年も残り2か月半、どれだけの映画を見られるのやら・・・)

というわけで、関係者の皆さん、今年も楽しい映画祭をありがとうございました!!
来年も楽しみだー♪

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