アジアフォーカス・福岡国際映画祭2016(1)~東南アジア編・その1

9月15日から25日まで、ユナイテッドシネマ・キャナルシティ13を中心に開催されていたアジアフォーカス・福岡国際映画祭。今年も参加してきました!
今年は「アジアの新作・話題作」を中心に20本鑑賞しました。
全体的に小粒な印象でしたが、心にしんみり響く作品が多かったように思います。
発展途上国を舞台とした映画では批判的に描かれることも少なくない、宗教や文化、慣習などですが、今回のアジアフォーカスでは、それらを受け入れながら、幸せを追い求める人々の姿をいきいきと描く作品が心に残りました。(公式サイト

では、ざっくりとですが、作品の概要と感想を記録します。
今年も地域別にまとめてみました。まずは、東南アジアの作品から。

※ネタバレあり。

※  ※  ※

( )内の★は個人的満足度。5点満点です。

『ぼくは詩の王様と暮らした』(★★★★)
ぼくは詩の王様と暮らした_ポスター
英題:My Life with a King
2015年/フィリピン/89分
監督:カルロ・エンシーソ・カトゥ
キャスト:ロンワルド・マーティン(ジェイピー)、フランシスコ・ギント(コンラド/王様)、セシル・ユムル(メディン)、クロエ・カルピオ(ティンティン) 他

1991年のピナトゥポ山大噴火で壊滅的被害を受けた、フィリピン北部のパンパンガ州を舞台に、一人の少年とパンパンガの言葉を守り続け「詩の王様」と呼ばれる老人の交流を描いたフィリピン映画。

母校の大先輩である「詩の王様」がその功績を称え表彰されることになり、学校で行われる表彰式のため、彼を迎えに行く役目を担った男子高校生ジェイピー。それがきっかけとなり、ジェイピーと王様夫妻との交流が始まります。
王様夫妻のジェイピーに対する愛情が深まっていく過程や、ジェイピーの心の変化など、まっすぐに映し出し、見ていてとても心地良い作品でした。
カメラは固定が多く、砂埃舞う大地を行く彼らの姿を、ロングショットで静かに見つめます。「せわしい」という言葉を忘れることができた、落ち着いた時間を堪能できました。

登場人物のほとんどが役者経験はなく、詩の王様役の方は実際にパンパンガ語の詩人であるフランシスコ・ギントさんが演じています。作中の詩は、世俗的な内容も多く、親しみやすさを感じました。
パンパンガ語はフィリピンの方言。話者も減り続け、失われつつある美しい伝統文化を守りたい、という思いが強く込められた作品です。

参照:映画祭の梁木ディレクターとカトゥ監督との対談(公式サイトより)
ディレクター懇談①: 『ぼくは詩の王様と暮らした』

『プラハからの手紙』(★★★★)
プラハからの手紙_ポスター
英題:Letters from Prague
2016年/インドネシア・チェコ/97分
監督:アンガ・ドウィマス・サソンコ
キャスト:ティオ・パクサデウォ(マフディ・ジャヤスリ)、ジュリー・エステル(ララサティ)、ウィディアワティ(スラストリ)、リオ・デワント(デワ) 他

亡き母の遺言に従いプラハへ旅立った女性が、異国の地で両親の歴史と祖国の歴史に触れ、自身の人生を見つめ直す姿を描くインドネシア映画。
引き裂かれた若き恋人たち、家族愛、祖国愛と、さまざまな愛がプラハの美しい街並みと音楽を背景に描かれます。

1965年の政変により、留学先のチェコから帰国することができなくなった学生たち。祖国を愛するがゆえに帰る場所を失った人々の悲しみの歴史を、より多くの観客に届くようにとあえてわかりやすいストーリーに仕上げています。映画を楽しみつつ、インドネシアの歴史のお勉強も…。
終盤、政変時に帰国することができずプラハに残らざるを得なかった人々の話をヒロインが聴く場面があります。その場面でのヒロインを演じた女優さんの表情は、演技というより、インドネシアの若い世代の一人として歴史の証言者の話に耳を傾ける、そんな表情でした。とても良い場面で、印象に残っています。

監督は、昨年のアジアフォーカスで上映された(昨年の記事)『モルッカの光』のアンガ・ドゥイマス・サソンコ監督。今作も、社会性とエンタメ性を両立させた作品になっています。
物語を美しく彩るプラハの街並み、そして音楽(どれもとっても素敵です!)。見て、聴いてうっとりできる映画でもあります。

『ビューティフル・デイズ』(★★★)
ビューティフル・デイズ_ポスター
英題:What’s With Love?
2002年/インドネシア/112分
監督:ルディ・スジャルウォ

『再会の時~ビューティフル・デイズ2~』(★★★★)
再会の時~ビューティフル・デイズ2~_ポスター
英題:What’s With Love 2
2016年/インドネシア/125分
監督:リリ・リザ
キャスト:ディアン・サストロワルドヨ(チンタ)、ニコラス・サプトラ(ランガ) 他

恋と友情の間で揺れ動く17歳の女子高生チンタ(インドネシア語で“愛”の意味)を中心に、彼女の友人たち、また彼女の恋の相手ランガ、若者たちの精一杯の青春を、切なくも爽やかに描いた映画『ビューティフル・デイズ』。
14年振りに、主要キャラは同じキャストで制作された続編『再会の時~ビューティフル・デイズ2~』。
続編は「アジアの新作・話題作」として、前作は特別上映として、今回のアジアフォーカスで上映されました。
前作も未見でしたので、先に前作を見てから続編を見ましたが、2作とも見ることができて良かったです。続編のオープニングでは前作の印象的なシーンのアニメーションが出てきたり、同じ音楽が使われていたり、14年前の面影も残るキャストらの姿に、冒頭から胸が熱くなりました。

前作は学校を舞台にしたありふれた青春物語でしたが、続編は古都ジョグジャカルタを舞台に、ジョグジャの美しい風景や文化も織り交ぜながら、9年振りに再会した男女が失われた二人の時間を取り戻していく物語となっています。
ランガのアメリカ留学のため、前作の最後でチンタとランガは別れるのですが、その後も遠距離恋愛を続けていました。ただ、9年前にランガから一方的に別れが告げられ、その後二人は別々の道を歩みます。
9年振りに再会し、当時の真相が明かされますが、9年前で時が止まったままのランガと、ときに止まることはあっても前に進んできたチンタたち女性陣との対比もまた面白かったです。
14年という時の中で失ったもの・得たもの。主人公二人だけでなく、他のメンバー(チンタの女友達)の人生も、多くは語られないのですが、グッとくるものがありました。

ランガは…ちょっと子供っぽいところもあったかな笑。
そんなランガを魅力的に演じるニコラス・サプトラさんが、本当にかっこよくて…。スクリーンにサプトラさんが映る度に、ニヤニヤが止まりませんでした。

前作はプロデューサーだったリリ・リザさんが、続編では監督をつとめています。
リリ・リザ監督、ジャンルを問わず、見る者の期待を裏切らない作品を毎回届けてくれますね。今年も福岡に来てくださってありがとうございました。(来年もぜひぜひ!)

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しばらく、アジアフォーカスの記事が続きます。

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