『息もできない』

今年最初の映画はDVDで。昨年評判を呼んだ韓国映画『息もできない』です。
少しネタバレしてます。

※  ※  ※

ストーリーはシネマトゥデイから。

母と妹の死の原因を作った父親に対して強い憎しみを持っている借金取りのサンフン(ヤン・イクチュン)は、ある日、女子高生のヨニ(キム・コッピ)と知り合う。サンフンは、強権的な父親や暴力的な弟との関係に悩むヨニに惹(ひ)かれ、それぞれの境遇から逃避するかのように何度も一緒に過ごすうちに、互いの心に変化が訪れる。

暴力の連鎖から抜け出せない人々のもがき苦しむ姿を描いた傑作です。

父親の家庭内暴力に苦しみながら、自分もまた暴力を振るうことでしか生きていけないサンフン。
ベトナム戦争の元兵士という経歴を持つ父と暴力的な弟の世話をする女子高生ヨニ。
二人の出会いは突然であり、またヨニにとってサンフンは自分に唾を吐きかけた最悪の相手でありながら、二人は相手に居場所を求めるように、二人の時間を重ねていきます。
二人は互いに弱さを見せようとしません。
しかし、わかるものはわかる。まるで吸い寄せられるように、過ごす時間が増えていくんです。
ハイライトは、家庭の事情に嘘をつく二人が互いの持つ傷に気付き、真に心を通わせる漢江(韓国北部を流れる川)でのシーン。
息苦しく嗚咽を漏らす二人ですが、本当に美しい名場面です。

悲劇的な作品ではありますが、終始それに覆われているわけではなく、絶望の中にも幸せがあり、夢のように漂うその幸せが嬉しいんです。見ているこちらも、嬉しくなるんです。
サンフンと悪友マンシクの友情も素晴らしいです。顔を合わせば汚い言葉で罵り合うのですが、言葉から、表情からにじみ出るのは憎しみではなく愛なんです。マンシクの表情にどれだけ救われたことか(サンフンを演じたヤン・インチュクはもちろんですが、マンシク役を演じたチョン・マンシクも本当に魅力的な人です!!)。

サンフンとヨニの出会いは、二人だけでなく、二人の周囲の人々も変えていきます。
マンシクもそうですし、サンフンの家族も、ヨニの家族も。
二人の出会いからは幸せも生まれましたが、同時に悲劇も生んでいます。
ヨニとの出会いをきっかけに、サンフンは暴力的な生活から抜け出そうとするのですが、うまくはいきません。最後の結末は、予想できるものでさえあったかも。
そして、生まれるべくして生まれた悲劇かもしれない。サンフン自身がそうであったように。
それがとても悔しいです。

いくら感動を言葉で語ろうとも、作品で描かれた「息もできない」苦しさは、やはり映画を見ないと伝わらないです。
特にサンフンの苦しみは、本当に痛いほどに、表情から言葉から映像から伝わってくるんです。映画館で見れなかったのが本当に残念です。

暴力を扱った映画なので、暴力シーンは多いし、泣き叫ぶ子どもの姿など見ていられないほどなんですが、でもお勧めしたい作品です。
作品が持つ圧倒的なパワーと、自身の経験をもとに一人で制作から監督、主演までつとめたヤン・イクチュンの思い・感情に触れることができて良かったと思います。

『息もできない』 (英題:BREATHLESS) 公式サイト
2008年/韓国/2時間10分
監督・脚本・製作:ヤン・イクチュン
編集:イ・ヨンジュン
撮影:ユン・チョンホ
美術:ホン・ジ
録音:ヤン・ヒョンチョル
音楽:インビジブル・フィッシュ
キャスト:ヤン・イクチュン、キム・コッビ、イ・ファン 他

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