町田康『権現の踊り子』(他4編)

町田康の短編集『権現の踊り子』を読んだので、ざっと感想を。

収録作品は以下の通り。

『鶴の壷』
『矢細君のストーン』
『工夫の減さん』
『権現の踊り子』
『ふくみ笑い』
『逆水戸』

初「町田康」です。
まずはなんといっても、彼の独特の文体ですね。なんて魅力的なんだろう!
考えて考えて考え抜かれた文章であるのに、いたって自然。主人公がいま目の前で語っているような、その語りに必死に耳を傾けている自分がいます。
相手は恥も無知も隠さずに気持ちを吐露してくるので、なんだか可笑しいんだけど、ちょっと変なんだけど、好感が持てます。気持ちいいくらいに開けっ広げです。
気取ったところがないんです、そこがいい。著者が出しゃばることもなく、無駄が一切ない感じ。

そして描かれる世界もまた、恐ろしい!
笑いの中に無情や悲哀の漂う作品が多く、笑った後に背中がヒヤリとすることも。
その中でも特に『ふくみ笑い』。この作品が一番好きです。
周囲の人間の“ふくみ笑い”を見て、みんなして俺を騙してあざ笑っている、という被害妄想?の止まらない男の話なんですが、“ふくみ笑い”に追い詰められていく男の哀しさを描きながら、突き進む妄想?の先に待ち受けていた世界に、思わず「えっ!?えっ!?」。
全く予想していなかった結末に、読み終わった後はしばし茫然としてしまいました。ネタバレするのはあれなので詳細は書きませんが、まあ、びっくりでした。
“ふくみ笑い”が男を追い詰めていく過程もとても読み応えがあって、そこからどのように話のオチをつけるのかと思っていたら、ああなってしまうのですから。もう目が点です。

水戸黄門のパロディ『逆水戸』も面白かったです。
情けない水戸黄門の話。
あまりいい話ではないのですが、スカッとします。なんででしょうね(笑)。

とにかく、彼の言葉に文章に虜になってしまいます。
一文が十行以上も続いたかと思えば、単語がポンっと投げ出されたり。
独特のリズムに翻弄されながらも、それがだんだん心地よくなっていくんですね。不思議です。

次は(今読んでいるものを読み終えてからになりますが)、長編『告白』に挑戦したいと思います。

権現の踊り子 (講談社文庫)
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